コレラ - マラウイ共和国

Disease outbreak news  2023年2月9日

発生状況一覧

マラウイ共和国(以下、「マラウイ」という。)では、2022年3月3日以降、全29地区から36,943人の患者と1,210人の関連死が報告され、コレラが広く流行しています。これは、同国の歴史上、最も多くの死者を出しているコレラの発生となっています。
 
マラウイでは1998年からコレラが流行しており、雨季にあたる11月~5月に季節的な流行が報告されています。しかし、今回の流行は乾季にも及んでおり、2022年3月以降、患者が報告されています。
 
流行期にあたる雨季が続いていること、地理的に大きく流行が広がっていること、致死率(以下、「CFR」という。)が3%を超える高値を推移していることを考慮し、現在広がっているコレラの流行を、マラウイ政府は2022年12月5日に公衆衛生上の緊急事態と宣言しました。 現在、同国では地理的な広がりの大きさと報告された症例数の多さから、あらゆる対応能力が限界に達しており、公衆衛生上、深刻な影響を及ぼすリスクが高まっています。マラウイでのコレラの発生は、世界的なコレラ急増に伴い、ワクチン、検査、治療法等の確保が困難になっていることを背景にしています。
 
先月から患者数が急増しており、緊急の大幅な介入なくしては、このまま自体が悪化していくことが懸念されます。

発生の概要

2022年3月2日にマチンガ(Machinga)地区病院でコレラ患者が検査確定となり、3月3日にマラウイ公衆衛生省からWHOにコレラの発生が通知されました。
 
2022年3月3日から2023年2月3日の間に、マラウイの全29地区から1,210人の死亡者を含む合計36,943人の患者が報告され、全体の致死率(CFR)は3.3%となっています。29地区中27地区で未だに伝播が続いています。1月の患者数17,078人は12月の7,017人に比べ143%増加しています。2月3日現在、マラウイ湖に接するマンゴチ(Mangochi)地区が最も被害が大きく、患者数6,974人、死者数114人(CFR 1.6%)と報告されています。
 
今回の流行は、2022年1月の熱帯性暴風雨Anaと3月のサイクロンGombeに伴う洪水により、もともと免疫力が低く、安全な水や保健設備、衛生設備にアクセスできない人々が避難してきた後、2022年3月にマチンガ地区から始まりました。2022年8月までは、主に南部地域の洪水被害を受けた地域に限定して発生していましたが、のちに北部と中部に広がりました。2022年12月以降、感染者は再び南部へと広がり、同国の2大都市であるブランタイヤ(Blantyre)とリロングウェ(Lilongwe)を含むすべての地域が疾病の影響を受けています。
 
流行発生当初から2023年2月3日現在まで、21歳から30歳の年齢層が最も影響を受けており症例全体の27.7%を占めています。次いで11歳から20歳の年齢層で全体の22.8%となっています。全患者のうち、17,943人が男性で、患者数の57%を占めています。2023年1月29日現在、60歳以上の高齢者の死亡が最も多く報告されています。死亡者の多くは男性で、全体の66%です。
 
1998年から今日に至るまで、コレラ患者は、特に、低地で平坦であり、雨季に洪水が発生しやすい南部地域で報告されています。患者数および死亡数が最も多かったのは、1998-99年(患者数25,000、死亡数860、CFR 3.4%)、2001-02年(患者数33,546、死亡数968、CFR 2.3%)、2008-09年(患者数5,751、死亡数125、CFR 2.2%)でした。

図1:マラウイにおける1日あたりのコレラ疑い・確定患者数(n=36,943)と死亡者数(n=1,210)、2022年3月3日から2023年2月3日。
出典 マラウイ保健人口省


図2:マラウイにおけるコレラ確定例・疑い例(n=36,943)および死亡例(n=1,210)の地区別分布(2022年3月3日から2023年2月3日)。
出典 マラウイ保健人口省


 

図3. 2022年3月3日から2023年2月3日にマラウイで確認されたコレラ患者および疑い患者(n=36,943)の年齢性別の分布。
出典 マラウイ保健人口省

コレラの疫学

コレラは、汚染された水や食品に含まれるビブリオコレラ菌を摂取することで発症する急性の腸管感染症です。主に劣悪な衛生環境や安全な飲料水へのアクセス不足が原因となっています。コレラは非常に悪性の疾患で、重度の急性水様性下痢症を引き起こし、高い罹患率と死亡率を伴います。また、曝露の頻度、曝露された人々、環境に応じて、急速に広がる可能性があります。コレラは子供と大人の両方に感染し、重症化すると治療を受けていない場合は、数時間で死に至ることもあります。
 
潜伏期間は、汚染された食物または水の摂取後12時間から5日間です。コレラ菌に感染しても、ほとんどの場合、症状は現れませんが、感染後1~10日間は糞便中に菌が存在し、環境中に排出されるため、他の人に感染する可能性があります。症状が出た人のほとんどは軽度または中等度の症状ですが、ときに急性水様性下痢と嘔吐を伴う重度の脱水症状を発症します。コレラは簡単に治療できる病気です。経口補水液(ORS)の迅速な投与により、ほとんどの人が治療でき、補水療法が成功すれば、CFRを1%以下に抑えることができます。
 
人道的危機の結果おこる、水と衛生設備の崩壊や、設備の不十分な過密キャンプへの住民の移住などに加えてコレラ菌が出現した場合、コレラ感染のリスクを高める可能性があります。
 
コレラの発生を抑え、死者を減らすには、監視や水と衛生(WASH)、社会動員、治療、経口コレラワクチンの組み合わせなど、多部門にわたるアプローチが不可欠です。

公衆衛生上の取り組み

2022年3月の発生宣言以降、保健省、WHO、その他のパートナー機関により緊急対応活動が実施されています。
 
調整と対応:
・現在進行中のコレラの発生は、2022年12月5日にマラウイ政府によって公衆衛生上の緊急事態と宣言されました。これにより、コレラはコロナウイルス疾患に関する大統領指示で発足した対策本部(presidential Taskforce)に組み込まれ、発生対策の調整をすることになりました。新型コロナウイルスとコレラに関する大統領の対策本部メンバーは、状況を理解するためにすべての感染地区を訪問しています。
・コレラの発生を管理するための費用対効果の高い国家コレラ対応計画が起草され、定期的に更新されています。WHOと他のパートナー機関は、この計画に沿った様々な活動の実施を支援しています。国レベルおよび地区レベルの緊急オペレーションセンター(EOC)が、他のパートナー機関との多部門対応を調整するために運用開始されました。
・コレラ対策のための多部門調整グループが流行発生地区に設立されました。
・国家危機管理チーム(IMT)は、発生に対する技術的対応の調整を続けています。IMTは、リロングウェの公衆衛生緊急オペレーションセンター(PHEOC)で、週に2回会議を開いています。WHO IMTチームは、国家IMTの合間に週3回会議を開き、すべての対応の策をまたいで効率的に支援を提供する方法を調整し、最新情報を入手しています。
・保健省が主導し、WHOやパートナー機関の支援を受けたすべての技術的専門分野のチームが、日常的に技術支援を提供し、現場レベルの支援を調整し続けています。
・国境を越えた備えは継続中で、モザンビークとザンビアの保健省、WHO、パートナー機関の職員が、地区間委員会を通じて会議を開いています。
 
サーベイランス:
・国家緊急対応チーム(RRT)がすべての流行発生地区に配備されました。
・保健サーベイランス・アシスタントは、積極的な症例調査とサーベイランスについて訓練を受けました。
・コミュニティや医療施設レベルでの症例発見が続いており、各地区に設置された迅速対応チームが症例の調査を続けています。
・データの収集と分析が継続され、状況報告書が定期的に作成・発行されています。コレラの状況について深く掘り下げた疫学的分析が行われています。
・データ収集ツールは統一され、印刷され、全地区に配布されました。大量の症例に伴う報告需要の高まりに対応するため、さらに多くのツールが印刷されています。
・保健省は、WHOとパートナーの支援を受けて、地域保健ボランティアの活用により、症例の早期発見のための地域ベースのサーベイランスを強化しています。最も深刻な感染拡大を受けた地区の一つであるリロングウェ地区では、コレラ感染の防止とコレラ関連死亡の抑制を目的とした、コミュニティによる統合的な介入を開始しました。同じ介入法が6つの高感染拡大地区で実施され、その後、すべての地区で展開されています。
・患者数と死亡数が多い地区では、保健省とWHOが協働して、現地での活動訪問が続けられています。
・報告とデータの質を向上させるため、感染多発の地区でサーベイランス担当者とデータ分析者の募集と配置が進められています。
・現在、国内外の専門スタッフからなるチームが情報管理、サーベイランス、データ管理の強化を支援するため、同国に滞在しています。このチームは、日報や週報、患者数や死亡率の詳細を示した地図、コレラ治療センター(CTC)やコレラ治療ユニット(CTU)の場所、年齢層や場所、発生した治療施設ごとの死亡者のプロファイリングなどの情報製品を作成し、目標とする介入策を導き出すために活動を続けています。
 
保健システムの強化/症例管理:
・症例管理は当初、感染が発生したすべての地区で345施設と非常に多く設置されたコレラ治療ユニット(CTU)を通じて実施されました。患者の規模と地理的状況が明らになるにつれて、ユニットは整理され、センターの数は少なくなっています。これは、地方分権的なアプローチを尊重しつつ、ケアの質を向上するためです。たとえば、リロングウェのエリア25やブワイラ(Bwaila)などのニーズの高い地域では、新しい施設が設立されたり、拡充されたりしました
・先週、4つの地域(サリマ、ブランタイヤ、リロングウェ、バラカ)でコレラ治療ユニットの見直しと評価が行われ、20以上の拠点で喫緊の課題が特定され、後方支援が求められました。これには、水と電気の供給改善、廃棄物管理の改善、重病に対処するための病床や医療機器の提供などが含まれます。
・スタッフのトレーニングでは、パートナー機関や保健省の協力のもと、13人の医師、46人のトレーナー、約200人の看護師が、必要な地域に派遣できる状態になりました。
・患者ケアのためのコアとなる標準化資料を作成し、治療と対応(輸液や観察表を含む)の記録をするために保健省と使用の合意に至りました。
・ケアの質に関する情報提供とコレラ症状の理解を深めるため、患者単位のデータを収集する目的で、紙と電子のデータ収集フォームが保健省と協働で作成され、コレラ治療センターへ展開されました。
・三次病院からの支援監督のネットワークが構築され、提供されるケアの質を高め、コレラ治療ユニットのスタッフをサポートするために、専門センターから患者治療現場への支援体制が構築されています。
・パートナー機関やセンターの所在地確認と、公式・非公式な患者紹介経路の特定を継続しています。これには、感染による負荷が高い地域や特定の人口層(2歳未満など)の調査も含まれ、コレラ治療センターのスタッフ数の増強につながりました。
・WHOとパートナーは、エリア25、エリア18、リクニ(Likuni)とブワイラ(Bwail)のコミュニティを含む、感染による負荷の高いコミュニティにおける経口補水設備(ORP)の設置を支援しています。現在、該当する10の地区で47カ所の経口補水液ポイントが設置され、コミュニティの患者の一次ケアポイントとして機能しています。教会指導者、牧師、村長、地域保健員、ボランティアが、経口補水ポイントの運営とコミュニティへの関与の重要性についてオリエンテーションを受けました。経口補水ポイントの提供は、患者に対して早期介入を行い、重度の脱水症状での入院を避けるために、速やかに拡大すべきです。
・3つの地区のコレラ治療センターでは、感染予防と管理、水と衛生に関する支援監督訪問が実施されています。主な指導内容は、コレラ治療センターでのケアにおける重症度に応じた患者の隔離、挿入器具の取り扱い、廃棄物管理、リネン管理、塩素の管理、個人保護具(PPE)の使用、監視員の管理、環境浄化などです。
・また、チームは3地区の3つのコミュニティを訪問し、水源の衛生検査、衛生施設、安全な水へのアクセス、家庭用水の塩素消毒などWASHの評価を行い、コミュニティでの健康教育も実施しました。
 
能力開発/IPC:
・コタコタ(Nkhotakota)、ルンフィ(Rumphi)、リコマ(Likoma)、チティパ(Chitipa)、カタベイ(Nkhatabay)、北ムジンバ(Mzimba North)、南ムジンバ(Mzimba South)、カロンガ(Karonga)で症例管理に関するトレーニングが実施されました。
・水源の衛生検査、衛生施設、安全な水へのアクセス、家庭用水の塩素消毒、コミュニティでの健康教育の実施など、WASHを評価するためのコミュニティの現地訪問を継続的に実施しました。
・北部のすべての地区のコレラ治療センター/コレラ治療ユニットの医療従事者を対象に、現場でのIPC研修と指導が行われました。
 
人的資源:
・保健省は、ブランタイヤ(Blantyre)、カロンガ(Karonga)、リロングウェ(Lilongwe)、マンゴチ(Mangochi)、カタベイ(Nkhatabay)、コタコタ(Nkhotakota)、ルンピ(Rumphi)、サリマ(alima)地区でのコレラ対応を支援するための緊急スタッフを公募しています。
・WHOは、全国のコレラ治療センター/コレラ治療ユニットを支援するために、医師40人(2023年2月3日現在、21人が勤務開始済み)、臨床検査技師80人、看護師160人の採用を支援しています。
 
検査機関:
・WHOは、ビブリオコレラのゲノム解読と並行して、非感染発生地域での新規症例の早期発見と確認に重点を置き、さらにすべての感染発生地域での発生状況を引き続き監視するため、保健省の検査能力向上と診断能力の強化を支援しています。
・WHOは、検査能力向上、試薬の提供、標準作業手順の策定を支援しています。
・配列決定のための検体収集は現在も進んでいます。一方、症例の定期的な検査は、コレラ治療センター/コレラ治療ユニットから毎週5-10個の検体を系統的に収集して行われています。
 
輸送と物資:
・コレラキットや経口補水液、輸液、抗生剤、迅速診断検査キット、個人防護具、テント、コレラ患者用ベッドなどの物資がWHOやパートナー機関によって流行発生地域に提供されました。
・流行発生地域では治療施設と経口補水設備が設置されました。現在、345のコレラ治療センターとコレラ治療ユニットが設立され、140が稼働しており、10地区で47の経口補水設備が設立され、高リスク者にあたる18万人以上の人の施設利用を可能にしています。
・WHOはコレラキットやその他の物資を提供し、流行発生地域に配布しており、発生当初から48,000件のコレラ患者を支援しています。追加の物資も搬入されています。
・2023年2月3日現在、リンゲル液17,600リットルを含む、コレラキット(薬剤セット)35個、が国内に到着するよう出荷されました。
・1,271個の乳酸リンゲル(500ml)と5,300袋の経口補水液がWHOからリロングウェを含む患者数の多い地区の病院に発送されました。
 
対応的ワクチン接種キャンペーン:
発生当初から2回の経口コレラワクチン(OCV)接種キャンペーンが21地区で実施されました。
 
・2022年5月にワクチン提供に関する国際調整グループ(ICG)に経口コレラワクチンを要請し承認された後、第1陣として合計1,947,696回分を受けとりしました。2022年5月23日から27日にかけて、バラカ(Balaka)、ブランタイヤ(Blantyre)、チクワ(Chikwawa)、マチンガ(Machinga)、マンゴチ(Mangochi)、ムランジェ(Mulanje)、ンサンジェ(Nsanje)、ファロンベ(Ohalombe)の8地区で経口コレラワクチンの1回目対応的ワクチン接種キャンペーンが実施され累積ワクチン接種率は69%となりました。
・2022年10月に再度ICGに経口コレラワクチンの要請を提出し、1回投与を目的として2,941,982回分のワクチン提供が承認されました。このキャンペーンは2022年11月28日から12月2日まで、13地区で実施されました。対象地域は、チティパ(Chitipa)、カスング(Kasungu)、ンサンジェ(Nsanje)、ルンフィ(Rhumphi)、サリマ(Salima)、カロンガ(Karonga)、ゾンバ(Zomba)、南・北ムジンバ(Mzimba)、カタベイ(Nkhatabay)、コタコタ(Nkhotakota)、リロングウェ(Lilongwe)、リコマ(Likoma)の13地区で、累積ワクチン接種率は83.6%でした。
・経口コレラワクチンの継続的な提供は、キャンペーン期間終了後も、マンゴチとブランタイヤ(対象13地区以外)での追加キャンペーンで継続されました。合計で、コレラのリスクが高く負担の大きい地域に住む人口の96.8%(2,825,229回分)に経口コレラワクチンが行き渡りました。
 
リスクコミュニケーションとコミュニティの参加
・コミュニティラジオや国営ラジオは、感染の発生したコミュニティの疾病への意識を高め、コレラ予防のメッセージを広めるために利用されています。4つのコミュニティラジオ(コタコタ(Nkhotakota)カタベイ(Nkhatabay) ムジンバ(Mzimba) ルンフィ(Rhumphi))は、ユニセフの支援を受けて広告を制作し、ラジオ番組や生放送でパネルディスカッション等を放送しています。
・WHOは情報、教育、コミュニケーション資料の作成を支援しました(これらに対するWASHの有効性を説くパンフレット、コレラ啓発のポスター、保健員用リーフレット、廃棄物管理に関するポスター、経口コレラワクチンのキャンペーンポスター)。
・赤十字の支援のもと、健康促進担当者が地元のリーダーや保健所の指導者に働きかけました。
・地区当局は、教会や地域の指導者、地元のコミュニティ組織等にコミュニティ内や集会時のコレラ予防対策を強化するようにメッセージを送りました。
・知識、態度、認識に関する調査がブランタイヤ(Blantyre)とサリマ(Salima) 、カタベイ(Nkhatabay)で実施され、コレラ発生の要因を理解し、感染の影響を受けたコミュニティで的を絞った介入策を導き出すために行われました。
 
WASH(水と衛生)の介入:
・コレラ治療キャンプに移動式トイレを提供し、5つのキャンプにプレハブ式トイレを設置しました。
・流行発生地区の世帯には、水処理と手指の衛生を含むWASHの促進について指導を実施しています。
・全地区の感染発生地では、一軒一軒の塩素消毒が実施されています。
・水質監視を強化するため、ユニセフから水質監視テストが寄贈され、地区全体に配布されました。
・水質監視はバラカ(Balaka)、ブランタイヤ(Blantyre)、チクワ(Chikwawa)、カロンガ(Karonga)、マチンガ(Machinga)、マンゴチ(Mangochi)、ムワンザ(Mwanza)、ネノ(Neno)、ンサンジェ(Nsanje)、ムワンザ(Mwanza)、サリマ(Salima)、コタコタ(Nkhotakota)、カタベイ(Nkhatabay)で実施されました。
・国際協力銀行(GIZ)による高純度次亜塩素酸塩の供給は、コタコタ、カタベイ、ルンピ(Rumphi)、カロンガ、ムジンバ(Mzimba)へ行われました。
・ゾンバ(Zomba)、ブランタイヤ、バラカ、マンゴチの4地区で、合計9,579台の塩素ディスペンサーが設置されました。
・保健サーベイランス・アシスタントが、全地区で1%の高純度次亜塩素酸塩原液を地域住民に継続的に配布しています。

WHOによるリスク評価

マラウイではコレラが流行しており、雨季になると季節的な大流行が起こります。最初の大きな流行は1998年に南部地方で広く発生し、25,000人の患者が報告されました。今回の大流行以前には、2001年10月から2002年4月にかけてマラウイで最大の流行が発生し、29地区のうち26地区で患者が発生し、合計33,546人の患者と968人の死者を出しました(CFR 3%)。
 
2022年1月に南部地域で発生した洪水を受けて、保健省は2022年3月3日にコレラの発生を確認しました。この発生は、当初は南部地域と洪水被災地域に限られていましたが、現在では国内のすべての地域と地区に広がっています。マラウイでは従来感染率の低い乾季(6月~10月)にも感染が続いています。11月から5月にかけての雨季の到来により、コレラの患者数はさらに増加し、蔓延することが予想されます。そのため、国レベルでのリスクは非常に高いと考えられています。疾病流行地、特にマラウイ湖畔の漁村ではWASHの機能が低いため、国内、近隣諸国、地域にコレラの発生が継続的に伝播する危険性があります。
 
21の感染発生地区の一部では、2回の対応的な単回投与経口コレラワクチン接種キャンペーンが実施されましたが、未接種の地区では依然として感染拡大リスクが残っています。最もリスクの高い地区で確認されたその他の課題には、感染発生地での症例管理および診断の能力不足があり、症例発見の遅れや予後の悪さにつながっています。これは、地域社会の受診行動の遅れにより、さらに深刻なものになっています。

WHOからのアドバイス

安全な水・衛生設備へのアクセスを改善することが急務となっています。WHOは、安全な飲料水と衛生設備へのアクセスを改善し、コレラ患者の適切かつ適時の症例管理へのアクセスを改善するとともに、医療施設における感染、予防、管理の改善を推奨しています。感染が発生したコミュニティにおける予防的衛生習慣と食品の安全性への理解促進は、コレラを抑制する最も効果的な手段です。的を絞った公衆衛生コミュニケーションメッセージは、これらの対応を成功させるための重要な要素です。経口コレラワクチンは、コレラの発生を抑制するために、またコレラのリスクが高い対象地域での予防のために、水と衛生の改善と合わせて使用されるべきです。
 
マンゴチ、ブランタイヤ、マチンガ、リロングウェにおける高い症例致死率の要因の1つは、医療機関受診が遅れたことであると考えられます。医療の介入を求める行動の遅れや、コミュニティへの啓発が不十分な場合、治療の遅れや死亡数の増加、また発生規模(患者数と関連死亡数)の過小評価につながる可能性があります。WHOは加盟国に対し、コレラの疑いのある症例を早期に発見し、適切な治療を提供し、その拡大を防ぐために、特にコミュニティレベルでのコレラのサーベイランスを強化・維持するよう勧告しています。早期かつ適切な治療により、入院患者のCFRは1%未満に抑えることが可能です。このコレラ発生の予防と封じ込めには、地区間および国境を越えた調整と協力、リスクコミュニケーション、コミュニティの関与が不可欠です。
 
WHOは、現在入手可能な情報に基づき、マラウイへの渡航や貿易の制限を勧告していません。しかし、今回の感染は国境を越えた移動が多い地域で発生しているため、WHOはマラウイとその近隣諸国に対し、国境を越えた感染拡大を迅速に食い止めるための協力と定期的な情報共有を行うよう呼びかけています。

出典

Cholera - Malawi
Disease Outbreak News 9 February 2023
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2023-DON435