鳥インフルエンザA(H9N2)―インド
状況概要
2024年5月22日、インドの国際保健規則(IHR)担当部局(NFP ; National Focal Point)は、インドの西ベンガル州在住の小児の鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスによるヒト感染の検査確定例をWHOに報告しました。これは、インドからWHOに報告された鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスのヒト感染症例としては、2019年に続き2例目です。現在、小児は回復し退院しています。IHR(2005年)によれば、新たなインフルエンザAウイルス亜型によるヒトへの感染は、公衆衛生に大きな影響を与える可能性のある事象であり、全例をWHOに報告する必要があります。鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスのヒト感染は、感染した家きんや汚染された環境への曝露によって引き起こされる例がほとんどです。鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスがヒトに感染した場合、軽度の臨床症状が現れる傾向があります。鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスは様々な地域の家きんで最も流行している鳥インフルエンザウイルスの一つであり、さらなるヒト感染例が散発的に発生する可能性があります。現時点で分かっている情報に基づき、WHOはこのウイルスが一般住民にもたらすリスクは現段階では低いと評価しています。しかし、今後、疫学的あるいはウイルス学的な情報が得られた場合には、リスク評価を見直していく予定です。
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発生の詳細
2024年5月22日、WHOはインドのIHR担当部局から、インドの西ベンガル州における鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルス感染のヒト症例に関する通知を受け取りました。
患者は西ベンガル州在住の4歳の子どもです。以前、気道過敏症と診断されており、2024年1月26日に発熱と腹痛で小児科を受診しました。1月29日、患者は発作を起こし、同じ小児科を受診しました。2月1日、重度の呼吸困難、高熱、腹部のけいれんが持続したため、患者は地元の病院の小児集中治療室(ICU)に入院し、ウイルス性肺炎後の感染性細気管支炎と診断されました。2月2日、患者は地元の公立病院のウイルス研究診断研究所でインフルエンザBとアデノウイルスが検査で確認され、2024年2月28日に退院しました。
3月3日、重度の呼吸困難が再発したため、患者は別の政府病院に紹介され、小児ICUで挿管され入院管理となりました。3月5日、鼻咽頭ぬぐい液の検体がコルカタのウイルス研究診断研究所に送られ、インフルエンザA(亜型は未同定)およびライノウイルス陽性と判定されました。同検体は亜型の分類のため、プネーにある国立ウイルス研究所の国立インフルエンザセンターに送られました。4月26日、検体はリアルタイムPCR反応によってインフルエンザA(H9N2)ウイルスと判定されました。 5月1日、患者は酸素吸入下にて退院しました。ワクチン接種状況及び抗ウイルス治療の詳細については、報告時点では不明です。
患者は自宅及びその周辺で家きん類に接触していました。報告時、家族、近隣住民、患者が通っていた医療施設の医療従事者に呼吸器疾患の症状を訴える人はいませんでした。
インドからWHOに報告された鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)のヒト感染症例としては、2019年に続き2例目です。鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)は様々な地域の家きんで最も流行している鳥インフルエンザウイルスの一つであるため、さらなるヒト感染例が散発的に発生する可能性があります。
患者は西ベンガル州在住の4歳の子どもです。以前、気道過敏症と診断されており、2024年1月26日に発熱と腹痛で小児科を受診しました。1月29日、患者は発作を起こし、同じ小児科を受診しました。2月1日、重度の呼吸困難、高熱、腹部のけいれんが持続したため、患者は地元の病院の小児集中治療室(ICU)に入院し、ウイルス性肺炎後の感染性細気管支炎と診断されました。2月2日、患者は地元の公立病院のウイルス研究診断研究所でインフルエンザBとアデノウイルスが検査で確認され、2024年2月28日に退院しました。
3月3日、重度の呼吸困難が再発したため、患者は別の政府病院に紹介され、小児ICUで挿管され入院管理となりました。3月5日、鼻咽頭ぬぐい液の検体がコルカタのウイルス研究診断研究所に送られ、インフルエンザA(亜型は未同定)およびライノウイルス陽性と判定されました。同検体は亜型の分類のため、プネーにある国立ウイルス研究所の国立インフルエンザセンターに送られました。4月26日、検体はリアルタイムPCR反応によってインフルエンザA(H9N2)ウイルスと判定されました。 5月1日、患者は酸素吸入下にて退院しました。ワクチン接種状況及び抗ウイルス治療の詳細については、報告時点では不明です。
患者は自宅及びその周辺で家きん類に接触していました。報告時、家族、近隣住民、患者が通っていた医療施設の医療従事者に呼吸器疾患の症状を訴える人はいませんでした。
インドからWHOに報告された鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)のヒト感染症例としては、2019年に続き2例目です。鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)は様々な地域の家きんで最も流行している鳥インフルエンザウイルスの一つであるため、さらなるヒト感染例が散発的に発生する可能性があります。
動物インフルエンザウイルスの疫学
動物インフルエンザウイルスは通常、動物の間で流行していますが、ヒトにも感染することがあります。ヒトへの感染は主に、感染した動物や汚染された環境との直接的な接触によって起こります。元の宿主動物の種類によって、インフルエンザAウイルスは、鳥インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、その他の動物インフルエンザウイルスに分類されます。
ヒトにおける鳥インフルエンザウイルス感染は、軽度な上気道感染からより重度の症状までの範囲で疾患を引き起こし、時として致死的となることもあります。呼吸器感染のほかに結膜炎、胃腸症状、脳炎、脳症も報告されています。
ヒトのインフルエンザ感染を診断するには、臨床検査が必要です。WHOは、分子生物学的手法を用いた人獣共通インフルエンザの検出に関する技術ガイダンス指針を定期的に更新しています。
ヒトにおける鳥インフルエンザウイルス感染は、軽度な上気道感染からより重度の症状までの範囲で疾患を引き起こし、時として致死的となることもあります。呼吸器感染のほかに結膜炎、胃腸症状、脳炎、脳症も報告されています。
ヒトのインフルエンザ感染を診断するには、臨床検査が必要です。WHOは、分子生物学的手法を用いた人獣共通インフルエンザの検出に関する技術ガイダンス指針を定期的に更新しています。
公衆衛生上の取り組み
WHOはグローバルガイダンスに沿って、ヒトと動物の両部門で、技術的助言、リスク評価の更新、緊急時対応計画の更新を通じて、インド政府に継続的な支援を提供しています。
インド政府は、今回の事態を受けて以下の調整活動を実施しました:
インド政府は、今回の事態を受けて以下の調整活動を実施しました:
- 公衆衛生の専門家、小児科医、畜産局と獣医大学および西ベンガル州政府の獣医職員で構成されるチームが結成され、地元の家きんにおけるインフルエンザ様疾患(ILI;Influenza like illness)の発生を調査しました。
- 報告地区および近隣地区では、ヒトにおけるインフルエンザ様疾患(ILI)のサーベイランスが強化されました。
- 地方獣医局は動物のサーベイランスを強化しました。
- 畜産局は、報告地域及び隣接地域の家きんや野鳥などにおける鳥インフルエンザウイルス(サーベイランス中のすべての亜型)のサーベイランスに関する情報を、州保健当局と共有し、中央レベルではインド政府保健家族福祉省と共有します。
- WHOは、インド保健省と畜産省の職員が、協力機関と共に、動物とヒトの接点における鳥インフルエンザの新たな世界的リスクに関する情報を常に入手できるよう、各国のIHRコアキャパシティの強化を引き続き支援します。
- ワンヘルス共同行動計画(OH JPA;One Health Joint Plan of Action)に従い、WHOは共同リスクアセスメントの能力を高めることで、ワンヘルス・アプローチの強化に積極的に取り組んでいます。
- WHOは、要請に応じて、各国の鳥インフルエンザ/パンデミックインフルエンザ危機管理計画を更新するための技術支援を行っています。
WHOによるリスク評価
鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)のヒト感染は、感染した家きんや汚染された環境との接触によって引き起こされることがほとんどです。鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)がヒトに感染した場合、軽度の臨床症状が現れる傾向があります。しかし、世界的には、過去に入院症例が数例、死亡症例が2例報告されています。また、家きんからウイルスが検出され続けていることから、今後も散発的なヒト感染例が予想されます。
共同調査によると、今回鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)のヒト感染が報告されたインドの同地域で新たな確定症例は報告されていません。
現在のところ、疫学的及びウイルス学的エビデンスによれば、鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)はヒト間で継続的に感染を繰り返す能力を獲得していないことが示唆されています。したがって、ヒトからヒトへの持続的感染拡大の可能性は低いと考えられます。しかし、今後、疫学的あるいはウイルス学的な情報が得られた場合には、リスク評価を見直す予定です。
感染地域からの海外渡航者は、旅行中又は他国到着後に感染症を発症する可能性があります。このような事態が発生したとしても、このウイルスはヒトの間で容易に感染する能力を獲得していないため、地域レベルでさらに感染が広がる可能性は低いと考えられています。
共同調査によると、今回鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)のヒト感染が報告されたインドの同地域で新たな確定症例は報告されていません。
現在のところ、疫学的及びウイルス学的エビデンスによれば、鳥インフルエンザウイルスA(H9N2)はヒト間で継続的に感染を繰り返す能力を獲得していないことが示唆されています。したがって、ヒトからヒトへの持続的感染拡大の可能性は低いと考えられます。しかし、今後、疫学的あるいはウイルス学的な情報が得られた場合には、リスク評価を見直す予定です。
感染地域からの海外渡航者は、旅行中又は他国到着後に感染症を発症する可能性があります。このような事態が発生したとしても、このウイルスはヒトの間で容易に感染する能力を獲得していないため、地域レベルでさらに感染が広がる可能性は低いと考えられています。
WHOからのアドバイス
今回の症例発生によって、現在のWHOの公衆衛生対策とインフルエンザのサーベイランスに関する勧告の変更はありません。しかし、すべてのヒトへの感染を徹底的に調査することが不可欠です。
動物インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者は、生きた家きんとの接触、生きた動物を取り扱う市場や農場などの危険性の高い場所への立ち入り、また家きんの糞便で汚染された可能性のあるところとの接触を避けるべきです。感染予防と管理(IPC;Infection prevention and control)には、環境の洗浄と消毒に加え、目で見て手が清潔であるように、石鹸と水による手洗い、又はアルコール手指消毒液の使用により、頻繁に手指衛生を行うなどの対策が必要です。
WHOは、本疾患の院内感染(医療現場での感染拡大)を防止するために、早期の感染制御・予防対策を実施するよう以下のアドバイスをしています。
新しい亜型のインフルエンザウイルスによるヒトへの感染はすべて、IHR(2005年)の下で届出することが求められています。IHR(2005年)の参加国は、パンデミックの可能性のあるA型インフルエンザウイルス(IVPP;influenza A virus of pandemic potential)による最近のヒト感染症例が検査確定された場合、直ちにWHOに通知することが義務付けられています。
WHOは今回の報告により、渡航や貿易の制限を実施しないよう助言しています。また、WHOは、渡航者に対する特別な対策は推奨していません。
動物インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者は、生きた家きんとの接触、生きた動物を取り扱う市場や農場などの危険性の高い場所への立ち入り、また家きんの糞便で汚染された可能性のあるところとの接触を避けるべきです。感染予防と管理(IPC;Infection prevention and control)には、環境の洗浄と消毒に加え、目で見て手が清潔であるように、石鹸と水による手洗い、又はアルコール手指消毒液の使用により、頻繁に手指衛生を行うなどの対策が必要です。
WHOは、本疾患の院内感染(医療現場での感染拡大)を防止するために、早期の感染制御・予防対策を実施するよう以下のアドバイスをしています。
- 疑われる症例に関する医療従事者の意識を高めること。
- 病院におけるスクリーニングとトリアージ(患者の分類)システムを導入すること。
- 疑われる症例に対してエアロゾルを発生させる処置を行う場合は、標準予防策および飛沫予防策、空気感染予防策(N95/FFP2/FFP3)を実施すること。
- 医療従事者の発熱やILIについて監視すること。
- 個人防護具とその使用に関する適切なトレーニングを提供すること。
新しい亜型のインフルエンザウイルスによるヒトへの感染はすべて、IHR(2005年)の下で届出することが求められています。IHR(2005年)の参加国は、パンデミックの可能性のあるA型インフルエンザウイルス(IVPP;influenza A virus of pandemic potential)による最近のヒト感染症例が検査確定された場合、直ちにWHOに通知することが義務付けられています。
WHOは今回の報告により、渡航や貿易の制限を実施しないよう助言しています。また、WHOは、渡航者に対する特別な対策は推奨していません。
出典
World Health Organization (11 June 2024). Disease Outbreak News; Avian Influenza A (H9N2) in India.
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2024-DON523
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2024-DON523
海外へ渡航される皆様へ
現在、動物の間で流行が見られる鳥インフルエンザウイルスについては、ヒトからヒトへ容易に感染する能力を獲得していないと考えられています。しかし、感染した動物との接触により鳥インフルエンザウイルスに感染した事例は各地で報告されています。
鳥インフルエンザウイルスに対するヒト用ワクチンは一般的に使用されていません。そのため、感染リスクのある場所や物、動物との接触を避けることが最も効果的な予防法です。FORTHウェブサイトで訪問先の国の感染症流行情報を確認し、鳥インフルエンザが発生している国へ旅行される際には、以下の点にご注意ください。
鳥インフルエンザウイルスに対するヒト用ワクチンは一般的に使用されていません。そのため、感染リスクのある場所や物、動物との接触を避けることが最も効果的な予防法です。FORTHウェブサイトで訪問先の国の感染症流行情報を確認し、鳥インフルエンザが発生している国へ旅行される際には、以下の点にご注意ください。
1.動物との接触を避ける:
- 養鶏場、鳥の羽をむしるなどの処理をしているところ、生きた動物を売買している市場に不用意に近づかないようにしましょう。
- 弱った鳥や死んだ鳥にさわったり、鳥のフンが舞い上がっている場所 で、ホコリを吸い込まないようにしましょう。
2.手洗いの徹底:
- 渡航期間中、日常的に流水、石鹸で手を洗うなど、基本的な感染症予防を心がけましょう。
3.帰国後の留意点:
- 発生国からの帰国時に発熱やせきがある方、鳥インフルエンザに感染した動物(死んだ動物を含む)や患者に接触したと思われる方は、検疫所の担当者に相談してください。
- 動物で鳥インフルエンザの発生がみられる地域から帰国された場合、帰国後10日間は、発熱や咳や痰などの呼吸器症状に注意を払いましょう。症状がみられる場合は、医療機関受診時に、海外渡航歴及び動物との接触歴を伝えてください。
これらの対策を徹底し、安全と健康に留意して渡航しましょう。
備考
厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成。
For translations: “This translation was not created by the World Health Organization (WHO). WHO is not responsible for the content or accuracy of this translation. The original English edition “[Title]. Geneva: World Health Organization; [Year]. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO” shall be the binding and authentic edition”.
For adaptations: “This is an adaptation of an original work “[Title]. Geneva: World Health Organization (WHO); [Year]. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition”.
For translations: “This translation was not created by the World Health Organization (WHO). WHO is not responsible for the content or accuracy of this translation. The original English edition “[Title]. Geneva: World Health Organization; [Year]. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO” shall be the binding and authentic edition”.
For adaptations: “This is an adaptation of an original work “[Title]. Geneva: World Health Organization (WHO); [Year]. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition”.