薬剤耐性、高病原性肺炎桿菌-世界の状況
状況概要
2024年初頭、世界的な薬剤耐性サーベイランスシステムと新興抗菌薬耐性レポート フレームワーク(Global Antimicrobial Resistance and Surveillance System on Emerging Antimicrobial Resistance Reporting : GLASS-EAR)は、カルバペネム系抗菌薬に対する耐性遺伝子(カルバペネマーゼ遺伝子)を保有する高病原性肺炎桿菌(hvKp; hypervirulent Klebsiella pneumoniae)シークエンスタイプ(ST)23の分離株の同定が増加していることから、現在の世界的状況を評価するための情報提供を要請しました。健常者に重篤な感染症を引き起こす可能性があり、近年その頻度が増加しているカルバペネマーゼ遺伝子を有するhvKpは、健常者と免疫不全者の両方に感染する能力を持ち、侵襲性感染症を引き起こす傾向が強いことから、従来の株に比べて強毒性であると考えられています。hvKp ST23株は、WHOの6地域すべてにおいて少なくとも1カ国で報告されています。カルバペネム系抗菌薬のような最後の手段とされる抗菌薬に耐性を持つこれらの分離株の出現は、代替抗菌薬による治療を必要としますが、多くの状況下ではそのような治療が受けられない可能性があります。WHOは、加盟国に対し、hvKpの早期かつ確実な同定を可能にするため、検査室での診断能力を段階的に向上させるとともに、分子生物学的検査や、耐性遺伝子に加えて関連する病原性遺伝子の検出・解析における検査室能力を強化するよう勧告します。WHOは世界レベルにおけるリスク評価として、サーベイランスの課題、検査率に関する情報の不足、地域伝播の規模を追跡し決定する能力、感染、入院、そしてこの病気の全体的な負担に関する利用可能なデータのギャップを考慮し、中程度としています。
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発生の詳細
2024年初頭、GLASS-EARは、世界的な薬剤耐性サーベイランスシステム(GLASS-AMR)に登録されているGlobal Antimicrobial Resistance and Surveillance System(GLASS)Antimicrobial Resistance(AMR)ナショナルフォーカルポイント(n=124)に対して情報提供を要請しました。その目的は、カルバペネム系抗菌薬に対する耐性遺伝子(カルバペネマーゼ遺伝子)を保有するhvKpシークエンスタイプ(ST)23の分離株の増加が数カ国で報告されていることから、現在の世界的な状況を迅速に評価することでした。この系統の持続的な伝播は数年にわたり記録されており、抗菌薬耐性に関連する遺伝子は近年、複数の国でhvKpから検出されています。
WHOの6つの地域にわたる124の国と地域のうち、合計43の国と地域が回答しました: アフリカ地域(10)、ヨーロッパ地域(10)、東地中海地域(10)、西太平洋地域(6)、アメリカ大陸地域(4)、東南アジア地域(3)。 このうち、合計16の国と地域(アルジェリア、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、カンボジア、香港特別行政区[中国]、インド、イラン、日本、オマーン、パプアニューギニア、フィリピン、スイス、タイ、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国[英国]、米国)がhvKpの検出を報告し、12の国と地域(アルジェリア、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、インド、イラン、日本、オマーン、フィリピン、スイス、タイ、英国)が特にST23-K1株の検出を報告しました。
本疾患を引き起こす細菌の能力を高めるメカニズムに関する情報や知識はまだ不充分です。検査能力が限られている国でも利用できる診断ツールを開発し、hvKpによる感染を迅速に特定できるようにするためには、さらなる研究が必要です。多剤耐性感染症の治療だけでなく、強毒性変異株による感染症にも対応できる新しい治療法を見出す必要があります。
WHOアフリカ地域では、hvKpの症例が存在するかもしれませんが、問題の程度はまだわかっていません。カルバペネム耐性遺伝子やその他の病原性マーカーや耐性マーカーを持つhvKp ST23株の検出には分子生物学的手法が必要ですが、この地域の多くの微生物検査室では日常的にモニタリングされていない可能性があります。
カルバペネム系抗菌薬に対する肺炎桿菌(K. pneumoniae)の薬剤耐性に関するデータは、この耐性プロファイルを報告した国の数が限られていることと、検査対象が限られていることから、この地域全体に適用することはできませんが、カルバペネム系抗菌薬に対するK. pneumoniaeの薬剤耐性は、WHOアフリカ地域ではすでに深刻な問題となっている可能性があり、さらなる調査が必要であるとともに、診断能力の強化、感染予防管理対策への介入、新規治療薬へのアクセスが求められています。
アメリカ大陸地域では、AMRサーベイランスが統合されており、カルバペネム耐性遺伝子を持つKp株の検出を広く記録することが可能となっています。しかし、hvKp株を日常的に同定し、これらの株に関する情報を収集できる体系的なサーベイランスは存在しません。
この地域のいくつかの国では、医療制度や医療サービスが、カルバペネム耐性遺伝子を保有するhvKp感染症例を特定し、適切に対応するだけでなく、感染予防管理対策を実施する上で課題に直面する可能性があります。カルバペネム耐性遺伝子を保有するhvKpが病院や地域社会で蔓延するリスクが高まる中、臨床的に疑い、検出、感染症例に適応された感染対策(隔離を含む標準予防策や接触予防策)の実施、そしてこの菌の保菌者の発見と管理は、考慮すべき課題です。
hvKpの有病率に関する入手可能なデータはWHO東地中海地域では乏しく、医療施設内のAMRに関する検査室サーベイランスや、数カ国における後ろ向きの疫学調査によってのみ記録されています。
2018年以降、この地域の2カ国(イランとオマーン)がhvKpの存在を報告していますが、この地域での伝播の程度や国内の状況についてはほとんど知られていません。
多くの国でhvKpを検出するための微生物検査室のインフラと能力が限られており、少なくとも9カ国では紛争が長期化または活発化している、あるいはその他の脆弱な状況にあるため、サーベイランスの改善には、検査室ネットワーク構築への投資を増やし供給が途絶えないようにし、検査室担当者に適切な訓練を行う必要があります。脆弱で紛争の影響を受けやすい環境では、非国家主体との関わりを増やす必要があるかもしれません。このような環境においてはhvKpが検出されない可能性が高く、また、この地域の国の間でかなりの移動があるため、臨床上および公衆衛生上の影響は依然として大きいです。
K. pneumoniaeにおける第三世代セファロスポリン系抗菌薬に対する薬剤耐性がWHOヨーロッパ地域で広まっています。欧州の多くの検査施設では通常は菌の特性を調べる検査が行われており、最も頻度の高いカルバペネム耐性遺伝子を分子レベルで同定する能力がありますが、細菌が疾病を引き起こす能力(病原性)を高める遺伝子の同定は、現在のところ標準的な診断法の一部ではありません。高病原性遺伝子の検出は日常的な微生物学的な診断検査の一部ではないため、臨床像を認識している臨床医がhvKpを疑い、さらなる特性解析やシークエンス決定のために分離株の検査を依頼しない限り、hvKpは検出されない可能性があります。hvKpの臨床像と拡大した疾患スペクトラムは、欧州地域の国々ではまだ多くの臨床医が経験していません。さらに、推定的な臨床診断は、市中感染の典型的な臨床的特徴を示すかどうかにかかっています。しかし、このような臨床像は、医療施設における感染リスクの高い患者では異なる可能性があり、医療関連hvKpの臨床診断を困難にしている可能性が高いです。
WHO東南アジア地域は、hvKpによる感染症の管理の課題を困難にさせる重大な要因である、高病原性とカルバペネム耐性の両方に関連する遺伝子を持つ株の出現が報告されています。
インドでは、2015年以降、分離されたKp特性解析が進められています。2016年にインドでカルバペネム耐性hvKpが同定され、その後、その臨床プロファイル、有効な抗菌薬、分子疫学、進化の軌跡およびhvKp変異体の有病率が報告されました。Kpにおける高病原性と抗菌薬耐性の原因となる細菌の能力をさらに高めるメカニズムが、様々な症例で確認されています。また、様々な種類のKpにおける耐性遺伝子や病原性遺伝子の役割も研究されています。
しかし、この地域のほとんどの国では系統的なサーベイランスがまだ整備されていないため、これらの菌株の広がりを効果的に監視することは困難です。いくつかの国ではAMRサーベイランスシステムが構築されているものの、診断および疫学的能力には大きなギャップがあり、それらはまだ発展途上です。hvKpの検出と同定は検査機関の能力に大きく依存しているが、その能力は地域によって大きく異なります。多くの検査施設では、ゲノム配列の決定や、高病原性に関連する特定のマーカーの解析に必要なリソースが不足しています。その結果、hvKpに関連する感染症は十分に検出されず、報告もされていない可能性が高いです。
この地域では、現在、市中よりも、院内で併存疾患を持つ患者が感染することが多いように、hvKpの疫学が変化しているため、従来の臨床診断によるhvKpと古典的なK. pneumoniaeの鑑別が難しくなっています。特に糖尿病をはじめとする合併症の増加や、人口密度の高さ、質の高い医療へのアクセスの不十分さといった要因も、この地域でhvKpの有病率を高めています。
WHO西太平洋地域では、薬剤耐性菌が蔓延し、各地域での感染予防管理対策が不十分であるため、hvKpが発生しているにもかかわらず、十分に認識されていない可能性があります。カルバペネム耐性遺伝子やその他の重要な病原性・薬剤耐性の特性を有するST23のようなhvKp株を同定するためには、標準的な微生物検査室では一般的に、より高度な診断検査が必要です。この地域のいくつかの加盟国は、薬剤感受性試験を実施することで、カルバペネム耐性を示すKp株を検出する能力を有しています。
WHOの6つの地域にわたる124の国と地域のうち、合計43の国と地域が回答しました: アフリカ地域(10)、ヨーロッパ地域(10)、東地中海地域(10)、西太平洋地域(6)、アメリカ大陸地域(4)、東南アジア地域(3)。 このうち、合計16の国と地域(アルジェリア、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、カンボジア、香港特別行政区[中国]、インド、イラン、日本、オマーン、パプアニューギニア、フィリピン、スイス、タイ、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国[英国]、米国)がhvKpの検出を報告し、12の国と地域(アルジェリア、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、インド、イラン、日本、オマーン、フィリピン、スイス、タイ、英国)が特にST23-K1株の検出を報告しました。
本疾患を引き起こす細菌の能力を高めるメカニズムに関する情報や知識はまだ不充分です。検査能力が限られている国でも利用できる診断ツールを開発し、hvKpによる感染を迅速に特定できるようにするためには、さらなる研究が必要です。多剤耐性感染症の治療だけでなく、強毒性変異株による感染症にも対応できる新しい治療法を見出す必要があります。
WHOアフリカ地域
カルバペネム系抗菌薬に対する肺炎桿菌(K. pneumoniae)の薬剤耐性に関するデータは、この耐性プロファイルを報告した国の数が限られていることと、検査対象が限られていることから、この地域全体に適用することはできませんが、カルバペネム系抗菌薬に対するK. pneumoniaeの薬剤耐性は、WHOアフリカ地域ではすでに深刻な問題となっている可能性があり、さらなる調査が必要であるとともに、診断能力の強化、感染予防管理対策への介入、新規治療薬へのアクセスが求められています。
WHOアメリカ大陸地域
この地域のいくつかの国では、医療制度や医療サービスが、カルバペネム耐性遺伝子を保有するhvKp感染症例を特定し、適切に対応するだけでなく、感染予防管理対策を実施する上で課題に直面する可能性があります。カルバペネム耐性遺伝子を保有するhvKpが病院や地域社会で蔓延するリスクが高まる中、臨床的に疑い、検出、感染症例に適応された感染対策(隔離を含む標準予防策や接触予防策)の実施、そしてこの菌の保菌者の発見と管理は、考慮すべき課題です。
WHO東地中海地域
2018年以降、この地域の2カ国(イランとオマーン)がhvKpの存在を報告していますが、この地域での伝播の程度や国内の状況についてはほとんど知られていません。
多くの国でhvKpを検出するための微生物検査室のインフラと能力が限られており、少なくとも9カ国では紛争が長期化または活発化している、あるいはその他の脆弱な状況にあるため、サーベイランスの改善には、検査室ネットワーク構築への投資を増やし供給が途絶えないようにし、検査室担当者に適切な訓練を行う必要があります。脆弱で紛争の影響を受けやすい環境では、非国家主体との関わりを増やす必要があるかもしれません。このような環境においてはhvKpが検出されない可能性が高く、また、この地域の国の間でかなりの移動があるため、臨床上および公衆衛生上の影響は依然として大きいです。
WHOヨーロッパ地域
WHO東南アジア地域
インドでは、2015年以降、分離されたKp特性解析が進められています。2016年にインドでカルバペネム耐性hvKpが同定され、その後、その臨床プロファイル、有効な抗菌薬、分子疫学、進化の軌跡およびhvKp変異体の有病率が報告されました。Kpにおける高病原性と抗菌薬耐性の原因となる細菌の能力をさらに高めるメカニズムが、様々な症例で確認されています。また、様々な種類のKpにおける耐性遺伝子や病原性遺伝子の役割も研究されています。
しかし、この地域のほとんどの国では系統的なサーベイランスがまだ整備されていないため、これらの菌株の広がりを効果的に監視することは困難です。いくつかの国ではAMRサーベイランスシステムが構築されているものの、診断および疫学的能力には大きなギャップがあり、それらはまだ発展途上です。hvKpの検出と同定は検査機関の能力に大きく依存しているが、その能力は地域によって大きく異なります。多くの検査施設では、ゲノム配列の決定や、高病原性に関連する特定のマーカーの解析に必要なリソースが不足しています。その結果、hvKpに関連する感染症は十分に検出されず、報告もされていない可能性が高いです。
この地域では、現在、市中よりも、院内で併存疾患を持つ患者が感染することが多いように、hvKpの疫学が変化しているため、従来の臨床診断によるhvKpと古典的なK. pneumoniaeの鑑別が難しくなっています。特に糖尿病をはじめとする合併症の増加や、人口密度の高さ、質の高い医療へのアクセスの不十分さといった要因も、この地域でhvKpの有病率を高めています。
WHO西太平洋地域
肺炎桿菌の疫学
肺炎桿菌(K. pneumoniae)は、腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌です。環境中(土壌、地表水、医療器具を含む)や哺乳類の粘膜に存在し、ヒトでは咽頭上部(鼻咽頭)や消化管に定着します。K. pneumoniaeは、世界的に医療機関で発症する感染症の主要な原因菌であり、一般的に入院患者や免疫不全者に感染症を引き起こすことから、日和見病原体とみなされてきました。アメリカ大陸地域では、K. pneumoniaeが院内肺炎の20~30%の原因菌であり、院内発症のグラム陰性菌菌血症で分離される菌のトップ3に入っていると推定されています。K. pneumoniaeは、特異的酵素(β-ラクタマーゼ)をコードする遺伝子の存在により、アンピシリンに対する自然耐性を有する。古典的なK. pneumoniae株は、肺炎、尿路感染、血流感染(菌血症)、髄膜炎などの重篤な感染症を引き起こす可能性があり、特に免疫不全者に感染した場合に注意が必要です。
ここ数十年、従来のK. pneumoniaeから派生した菌株が、さまざまな抗菌薬に対する耐性を獲得することが増加しています。一つの耐性に関わるメカニズムは、ペニシリン系、セファロスポリン系、モノバクタム系抗菌薬に耐性を示す、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL; extended spectrum β-lactamases)として知られる酵素の発現によるものです。もう1つは、カルバペネマーゼとして知られる別のタイプの酵素の発現によるものであり、ペニシリン系、セファロスポリン系、モノバクタム系、カルバペネム系を含む利用可能なすべてのβ-ラクタム系抗菌薬に対して耐性となります。健常者に重篤な感染症を引き起こす可能性があり、近年その頻度が増加しているKp株は、健常者と免疫不全者の両方に感染する能力を持ち、侵襲性感染症を引き起こす傾向が強いため、従来の株に比べて高病原性であると考えられています。
ここ数十年、従来のK. pneumoniaeから派生した菌株が、さまざまな抗菌薬に対する耐性を獲得することが増加しています。一つの耐性に関わるメカニズムは、ペニシリン系、セファロスポリン系、モノバクタム系抗菌薬に耐性を示す、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL; extended spectrum β-lactamases)として知られる酵素の発現によるものです。もう1つは、カルバペネマーゼとして知られる別のタイプの酵素の発現によるものであり、ペニシリン系、セファロスポリン系、モノバクタム系、カルバペネム系を含む利用可能なすべてのβ-ラクタム系抗菌薬に対して耐性となります。健常者に重篤な感染症を引き起こす可能性があり、近年その頻度が増加しているKp株は、健常者と免疫不全者の両方に感染する能力を持ち、侵襲性感染症を引き起こす傾向が強いため、従来の株に比べて高病原性であると考えられています。
公衆衛生上の取り組み
WHOは、加盟国に対し、hvKpの迅速かつ正確な同定を可能にするため、検査室の診断能力を段階的に向上させるとともに、耐性遺伝子に加えて、関連する病原性遺伝子の分子生物学的検査および検出・分析における検査室の能力を強化するよう勧告しています。WHOは、hvKpの検出に関する臨床と公衆衛生上の意識強化を推進し、hvKpの合意がとれた定義と必要な検出・確認アルゴリズムの開発を支援します。WHOは、報告された症例や事象を引き続き注意深く監視します。
WHOによるリスク評価
世界的にみても、hvKpの日常的な同定と情報収集を可能にする体系的なサーベイランスは存在しません。hvKpの同定は、ゲノムシークエンシングや、高病原性に特異的なマーカーの解析を実施可能な検査施設の能力によって決定されるため困難であり、hvKpに関連する感染症の有病率は過小評価されている可能性があります。
世界レベルでのhvKpの現在のリスク評価は、1)カルバペネム耐性遺伝子を保有するhvKpの出現と持続的伝播、同定された薬剤耐性が関連事象に及ぼす公衆衛生上の影響を考慮する、2)地理的伝播のリスク、3)利用可能な資源による管理能力不足のリスク、4)可動性遺伝因子を介した他の菌種への耐性伝播のリスクなど、いくつかのリスク要素を組み込むことを目的としています。
世界レベルでのリスクは、以下を考慮すると中程度と評価される:
1.hvKpによる感染症は従来、特定の地域(アジア)のコミュニティ内で発生し、高い罹患率と死亡率、高い病原性、限られた抗菌薬の選択肢と関連していました。しかし、WHOヨーロッパ地域および欧州疾病予防管理センター(ECDC)からの最近の報告では、医療現場での伝播が示されており、中国のいくつかの研究では、hvKpの医療関連感染のクラスターが報告されています。したがって、医療現場でこれらの症例を管理する際には、厳格な感染予防管理対策が重要であることが強調されています。高病原性と薬剤耐性が同時に存在することで、地域レベルでも病院レベルでも、これらの菌株が蔓延するリスクが高まることが予想されます。
2.他の耐性メカニズムと同様に、人の移動(国内および国や地域間)が多いため、蔓延のリスクが高まる可能性があります。
3.カルバペネム耐性hvKpに対する抗菌薬治療の選択肢は非常に限られており、これらの株は流行を引き起こす可能性があります。
4.カルバペネム耐性hvKpの高い接合伝達能と、臨床現場でのさらなる伝播の可能性;hvKp ST23株は特に、他の腸内細菌を凌駕して保菌と伝播を促進します。
5.多剤耐性または超多剤耐性病原体の出現を検出するには、医療施設における効果的な感染予防管理対策プログラムだけでなく、耐性菌検査サーベイランスシステムの確立が必要です。
6.検査室の能力不足は診断の制限につながり、これはサーベイランスの感度に影響します。hvKp感染症の検査室診断は分子生物学的検査が利用できるかどうかにかかっているため、影響を受けている国の多くは臨床現場での診断能力を有していません。
7.この病原体の検査室でのサーベイランス能力は世界的に不均一です。このため、ほとんどの国や地域では、hvKp感染症の体系的なサーベイランス(検出、監視、報告)は行われていません。集団発生や症例は、抗菌薬耐性に関する検査室サーベイランスや後方視的疫学調査によって非系統的に記録されており、hvKp感染症の有病率に関するデータは乏しいです。
8.カルバペネム耐性hvKpの感染予防管理対策には大きな課題があります。というのも、各地域の国々におけるhvKpの蔓延の程度を明らかにすることができず、この問題に関する情報は現在のところ限られているからです。
サーベイランスの課題、検査率に関する情報の不足、地域伝播の規模を追跡し決定する能力、感染、入院、そしてこの疾病の全体的な負担に関する利用可能なデータのギャップを考慮すると、世界レベルで利用可能な情報とリスク評価に対する信頼度は中程度です。
世界レベルでのhvKpの現在のリスク評価は、1)カルバペネム耐性遺伝子を保有するhvKpの出現と持続的伝播、同定された薬剤耐性が関連事象に及ぼす公衆衛生上の影響を考慮する、2)地理的伝播のリスク、3)利用可能な資源による管理能力不足のリスク、4)可動性遺伝因子を介した他の菌種への耐性伝播のリスクなど、いくつかのリスク要素を組み込むことを目的としています。
世界レベルでのリスクは、以下を考慮すると中程度と評価される:
1.hvKpによる感染症は従来、特定の地域(アジア)のコミュニティ内で発生し、高い罹患率と死亡率、高い病原性、限られた抗菌薬の選択肢と関連していました。しかし、WHOヨーロッパ地域および欧州疾病予防管理センター(ECDC)からの最近の報告では、医療現場での伝播が示されており、中国のいくつかの研究では、hvKpの医療関連感染のクラスターが報告されています。したがって、医療現場でこれらの症例を管理する際には、厳格な感染予防管理対策が重要であることが強調されています。高病原性と薬剤耐性が同時に存在することで、地域レベルでも病院レベルでも、これらの菌株が蔓延するリスクが高まることが予想されます。
2.他の耐性メカニズムと同様に、人の移動(国内および国や地域間)が多いため、蔓延のリスクが高まる可能性があります。
3.カルバペネム耐性hvKpに対する抗菌薬治療の選択肢は非常に限られており、これらの株は流行を引き起こす可能性があります。
4.カルバペネム耐性hvKpの高い接合伝達能と、臨床現場でのさらなる伝播の可能性;hvKp ST23株は特に、他の腸内細菌を凌駕して保菌と伝播を促進します。
5.多剤耐性または超多剤耐性病原体の出現を検出するには、医療施設における効果的な感染予防管理対策プログラムだけでなく、耐性菌検査サーベイランスシステムの確立が必要です。
6.検査室の能力不足は診断の制限につながり、これはサーベイランスの感度に影響します。hvKp感染症の検査室診断は分子生物学的検査が利用できるかどうかにかかっているため、影響を受けている国の多くは臨床現場での診断能力を有していません。
7.この病原体の検査室でのサーベイランス能力は世界的に不均一です。このため、ほとんどの国や地域では、hvKp感染症の体系的なサーベイランス(検出、監視、報告)は行われていません。集団発生や症例は、抗菌薬耐性に関する検査室サーベイランスや後方視的疫学調査によって非系統的に記録されており、hvKp感染症の有病率に関するデータは乏しいです。
8.カルバペネム耐性hvKpの感染予防管理対策には大きな課題があります。というのも、各地域の国々におけるhvKpの蔓延の程度を明らかにすることができず、この問題に関する情報は現在のところ限られているからです。
サーベイランスの課題、検査率に関する情報の不足、地域伝播の規模を追跡し決定する能力、感染、入院、そしてこの疾病の全体的な負担に関する利用可能なデータのギャップを考慮すると、世界レベルで利用可能な情報とリスク評価に対する信頼度は中程度です。
WHOからのアドバイス
1.カルバペネム耐性hvKpを同定するための認識と検査能力
・各国は、カルバペネム耐性hvKpを検出するための臨床および公衆衛生に対する認識を強化すべきです。カルバペネム耐性を示すKpの侵襲性株が分離された場合、さらなる検査を検討すべきです(可能な場合)。最適な臨床管理を行うためには、hvKpと古典的なK. pneumoniae を鑑別する能力が必要です。さらに、hvKpによる感染部位によって、組織濃度を最適化するための抗菌薬レジメンの変更が必要となり(例:前立腺、中枢神経系)、治療期間に影響を及ぼす可能性があります。薬剤耐性hvKp(例:カルバペネム耐性hvKpなど)の場合、治療の選択肢が限られるため、このことはさらに重要です。市中感染型hvKp感染症の典型的な臨床像、肺炎桿菌感染症の体内での異常な広がり、または重症度や死亡率の上昇に関連する医療関連Kp感染症のクラスターに基づいて、hvKp感染症が疑われる症例同定するために、臨床医や診断検査機関の認識を高める必要があります。
・WHOは加盟国と連携して、hvKpの定義について合意を得るべきです。hvKpの定義について現在のところ合意が得られていないのは、遺伝的背景の多様性や病原性メカニズムの複雑さにも起因しており、その結果、hvKp感染の有病率、同定、診断についての理解が不足しているからです。現在までに、複数の病原性因子と表現型がよく特徴付けられており、これらの特徴のいくつかはhvKpのマーカーとして有用です。このような定義のコンセンサスが得られるまでは、各国は、バイオマーカーの検出、Kleborate病原性スコア、またはその他の利用可能な方法など、hvKpを検出するために現在利用可能なスキームを慎重に使用し続けるべきです。
・各国は、分子生物学的検査や、耐性遺伝子に加えて関連する病原性遺伝子の検出と解析において、国立標準検査機関の中心的な役割を強化すべきです。検査室で日常的に高病原性株をスクリーニングする効果的な方法と戦略を開発し、また、より高度な特性解析のための検体検出を補助する臨床的な症例定義を確立させるべきです開発します。
2.前向きのデータ収集とサーベイランス
・各国は、侵襲性感染症を含む微生物学的・臨床的データを系統的に収集し、眼(眼内炎)、肺、中枢神経系など カルバペネム耐性hvKp が存在する可能性のある身体部位を考慮して、国レベルで症例数を監視するサーベイランスシステムを(まだ導入されていない場合には)構築すべきです。
・感染症の臨床症状から病原性マーカーの遺伝的特性解析とその結果の解釈に至るまで、高病原性の検出、確認、特徴づけのためのアルゴリズムを開発するとともに、利用可能な資源に関わらず加盟国がこれらの分離株を検出できる方法論の選択肢が必要です。
・カルバペネム耐性hvKp感染が疑われる、あるいは確認された場合、治療で用いられる抗菌薬を監視するサーベイランスシステムを構築するとともに、臨床転帰を評価します。
・各国は、GLASS-EAR やその他の世界的・地域的なチャンネルを通じて、カルバペネム耐性hvKp の新規症例を WHO に報告し続けるべきです。
3. 感染予防管理対策
・医療施設は、急性期医療施設と長期療養施設の両方において、すべての患者を管理する際に必要とされる一般的な感染予防管理対策(標準および感染経路に基づいた感染予防策)を熟知しているべきです。
・急性期医療施設と長期療養施設の両方において、カルバペネム耐性hvKpの疑いおよび/または確定症例と接触者の迅速な管理のために、国および医療施設レベルでカルバペネム耐性菌の蔓延を予防管理するためのWHOガイドラインおよび実施マニュアルに従って強化された感染予防管理対策が実施されるべきです。
・急性期医療施設と長期療養施設の両方におけるカルバペネム耐性hvKpに対する強化された感染予防管理対策は、カルバペネム耐性「古典的」肺炎桿菌に対する強化された感染予防管理対策と類似しているため、ガイドラインに記載されている感染予防管理対策の具体的な内容は依然として有効です。
・各国は、カルバペネム耐性hvKpを検出するための臨床および公衆衛生に対する認識を強化すべきです。カルバペネム耐性を示すKpの侵襲性株が分離された場合、さらなる検査を検討すべきです(可能な場合)。最適な臨床管理を行うためには、hvKpと古典的なK. pneumoniae を鑑別する能力が必要です。さらに、hvKpによる感染部位によって、組織濃度を最適化するための抗菌薬レジメンの変更が必要となり(例:前立腺、中枢神経系)、治療期間に影響を及ぼす可能性があります。薬剤耐性hvKp(例:カルバペネム耐性hvKpなど)の場合、治療の選択肢が限られるため、このことはさらに重要です。市中感染型hvKp感染症の典型的な臨床像、肺炎桿菌感染症の体内での異常な広がり、または重症度や死亡率の上昇に関連する医療関連Kp感染症のクラスターに基づいて、hvKp感染症が疑われる症例同定するために、臨床医や診断検査機関の認識を高める必要があります。
・WHOは加盟国と連携して、hvKpの定義について合意を得るべきです。hvKpの定義について現在のところ合意が得られていないのは、遺伝的背景の多様性や病原性メカニズムの複雑さにも起因しており、その結果、hvKp感染の有病率、同定、診断についての理解が不足しているからです。現在までに、複数の病原性因子と表現型がよく特徴付けられており、これらの特徴のいくつかはhvKpのマーカーとして有用です。このような定義のコンセンサスが得られるまでは、各国は、バイオマーカーの検出、Kleborate病原性スコア、またはその他の利用可能な方法など、hvKpを検出するために現在利用可能なスキームを慎重に使用し続けるべきです。
・各国は、分子生物学的検査や、耐性遺伝子に加えて関連する病原性遺伝子の検出と解析において、国立標準検査機関の中心的な役割を強化すべきです。検査室で日常的に高病原性株をスクリーニングする効果的な方法と戦略を開発し、また、より高度な特性解析のための検体検出を補助する臨床的な症例定義を確立させるべきです開発します。
2.前向きのデータ収集とサーベイランス
・各国は、侵襲性感染症を含む微生物学的・臨床的データを系統的に収集し、眼(眼内炎)、肺、中枢神経系など カルバペネム耐性hvKp が存在する可能性のある身体部位を考慮して、国レベルで症例数を監視するサーベイランスシステムを(まだ導入されていない場合には)構築すべきです。
・感染症の臨床症状から病原性マーカーの遺伝的特性解析とその結果の解釈に至るまで、高病原性の検出、確認、特徴づけのためのアルゴリズムを開発するとともに、利用可能な資源に関わらず加盟国がこれらの分離株を検出できる方法論の選択肢が必要です。
・カルバペネム耐性hvKp感染が疑われる、あるいは確認された場合、治療で用いられる抗菌薬を監視するサーベイランスシステムを構築するとともに、臨床転帰を評価します。
・各国は、GLASS-EAR やその他の世界的・地域的なチャンネルを通じて、カルバペネム耐性hvKp の新規症例を WHO に報告し続けるべきです。
3. 感染予防管理対策
・医療施設は、急性期医療施設と長期療養施設の両方において、すべての患者を管理する際に必要とされる一般的な感染予防管理対策(標準および感染経路に基づいた感染予防策)を熟知しているべきです。
・急性期医療施設と長期療養施設の両方において、カルバペネム耐性hvKpの疑いおよび/または確定症例と接触者の迅速な管理のために、国および医療施設レベルでカルバペネム耐性菌の蔓延を予防管理するためのWHOガイドラインおよび実施マニュアルに従って強化された感染予防管理対策が実施されるべきです。
・急性期医療施設と長期療養施設の両方におけるカルバペネム耐性hvKpに対する強化された感染予防管理対策は、カルバペネム耐性「古典的」肺炎桿菌に対する強化された感染予防管理対策と類似しているため、ガイドラインに記載されている感染予防管理対策の具体的な内容は依然として有効です。
出典
World Health Organization (31 July 2024). Disease Outbreak News; Antimicrobial Resistance, Hypervirulent Klebsiella pneumoniae - Global situation
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2024-DON527
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2024-DON527
海外へ渡航される皆様へ
薬剤耐性、高病原性肺炎桿菌は、カルバペネム系抗菌薬のような最後の手段とされる抗菌薬に耐性を持つ細菌で、感染した場合、肺炎、尿路感染、血流感染(菌血症)、髄膜炎などの重篤な感染症を引き起こす可能性があり、治療できる抗菌薬も限られていることから、特に免疫不全者に感染した場合に注意が必要です。
医療機関を訪れる際は、適切なマスクの着用を検討しましょう。
緊急時の経済的負担を軽減するために、渡航先での医療費をカバーする旅行保険に加入することを検討しましょう。
- 個人防護:
医療機関を訪れる際は、適切なマスクの着用を検討しましょう。
- 健康管理:
緊急時の経済的負担を軽減するために、渡航先での医療費をカバーする旅行保険に加入することを検討しましょう。
備考
厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成。
This translation was not created by the World Health Organization (WHO). WHO is not responsible for the content or accuracy of this translation. The original English edition “Antimicrobial Resistance, Hypervirulent Klebsiella pneumoniae - Global situation. Geneva: World Health Organization; 2024. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO.
This is an adaptation of an original work “Antimicrobial Resistance, Hypervirulent Klebsiella pneumoniae - Global situation. Geneva: World Health Organization (WHO); 2024. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition.
This translation was not created by the World Health Organization (WHO). WHO is not responsible for the content or accuracy of this translation. The original English edition “Antimicrobial Resistance, Hypervirulent Klebsiella pneumoniae - Global situation. Geneva: World Health Organization; 2024. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO.
This is an adaptation of an original work “Antimicrobial Resistance, Hypervirulent Klebsiella pneumoniae - Global situation. Geneva: World Health Organization (WHO); 2024. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition.