エムポックス-アフリカ地域

状況概要

2024年8月14日、WHO事務局長は、コンゴ民主共和国およびアフリカの多くの国々で増加しているエムポックスの急増が、国際保健規則(2005年)(IHR)の下で最高レベルの警報である「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC ; Public Health Emergency of International Concern)」に該当すると決定しました。この記事では、2022年に複数国での流行が始まって以来、新たに症例が報告された地域の国々について述べます。2023年9月にコンゴ民主共和国で始まったクレードIb のモンキーポックスウイルス(MPXV)アウトブレイクは、同国での患者数が増加しており、近隣諸国にも拡大しています。ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダがそれぞれ最初のエムポックス症例を報告しています。報告症例の中にはコンゴ民主共和国東部への渡航歴があるものも含まれ、これらの全ての国でクレードIb MPXVが確認されています。入手可能な疫学データによると、このクレードは、セックスワーカーとその顧客のネットワーク内で確認された性的接触を含む密接な身体的接触により、成人の間で急速に広がっています。ウイルスがさらに広がるにつれ、罹患グループも変化しており、家庭内やその他の環境でもウイルスが定着しています。さらにコートジボワールでは、2022年の複数国での流行開始以降初めて、クレードII型エムポックスの症例が報告されています。

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発生の詳細

以下は、2022年の流行開始以来、アフリカ地域で新たにエムポックス(クレードIまたはクレードII)感染の症例が報告された国々です。同地域ではさらに多くの国から症例が報告され続けており、最新の疫学的傾向を含むこれらの国々の最新情報については、最近発表されたダッシュボードを参照してください。
 

中央・東アフリカ 

ブルンジ 

2024年7月25日、ブルンジの保健省は、国立公衆衛生研究所の国立リファレンス・ラボラトリ―で3例の患者が確認されたことを受け、エムポックスのアウトブレイクを宣言しました。これらの症例は7月22日に確認され、1症例目はカメンゲ大学病院、2症例目はカメンゲ軍病院、3症例目はイサレ保健地区で確認されました。これらの症例は7月24日に発熱、関節痛、広範囲の発疹などの症状が現れたと報告しています。7月25日、集学的調査で採取された検体がPCR検査でエムポックス陽性と判定されました。これらはブルンジで確認された初めてのエムポックス症例です。 
2024年8月17日現在、アウトブレイク宣言以来、545件のエムポックス症例が報告され、そのうち474件(86.9%)の疑い例が調査され確認されました。検査された疑い例358例のうち、142例(39.7%)がMPXV陽性でした。ゲノム配列解析の結果、クレードIb MPXVが確認されました。8月17日現在、死亡例は報告されていません。
確定症例は49地区のうち26地区(53.1%)から報告されています。最も感染者が多いのは都市部のブジュンブラ市北部で、142例中54例(38%)です。報告時点では死亡例は報告されていません。
男性が55.6%、女性が44.4%を占めています。5歳未満の小児が28.9%を占め、次いで11歳から20歳(20.4%)、21歳から30歳(18.3%)です。
 

ケニア 

2024年7月29日、保健省はタンザニアと国境を接するタイタ・タベタ郡でエムポックスの患者を確認しました。患者はキアンブ郡(ナイロビの隣)在住の42歳のケニア人男性です。この患者は、ウガンダのカンパラからケニアのモンバサへの渡航歴があり、確認された時点では、タンザニア経由でルワンダに渡航中でした。
8月13日現在、合計14例の疑い例が確認され、1例はMPXVクレードIb陽性、12例は陰性、1例は検査結果がまだ出ていません。これはケニアで確認された初めてのMPXV感染者です。8月13日現在、死亡例は報告されていません。
 

ルワンダ 

2024年7月24日、ルワンダの国際保健規則(IHR)担当窓口(NFP ; National Focal Point)部局は、ルワンダで検査診断された2例のエムポックス患者をWHOに通知し、7月27日、保健省は同国でのエムポックスのアウトブレイクを宣言しました。患者には、コンゴ民主共和国に頻繁に渡航している33歳の女性(症例1)と、最近コンゴ民主共和国に渡航歴のある34歳の男性(症例2)が含まれます。症例1はルシジ地区の入国地点で確認、隔離され、症例2はガサボ地区のキバガバガ病院で確認されました。両症例とも病状は安定しており、継続的な経過観察中であると報告されています。これらは、ルワンダで確認された初めてのエムポックス患者です。
2024年8月7日現在、ルワンダでは、累計で4例のエムポックス患者と0例の死亡者が報告されています。新たな2例の患者のうち、1例は34歳の男性で、キガリのガサボ地区に住んでいます。症状は2024年7月15日に始まり、発熱、リンパ節の腫れ、咽頭痛および腕、顔、性器に発疹がみられました。彼は2024年7月12日にブルンジから帰国し、現在隔離されています。濃厚接触者5例が経過観察中です。もう1例は39歳のルワンダ人男性で、キクキロ地区在住、コンゴ民主共和国への渡航歴があります。彼は2024年7月12日に頭痛を伴う同様の症状を呈しました。彼の濃厚接触者4例が特定され、追跡調査中です。ゲノム配列解析の結果、クレードIb MPXVが確認されました。 
 

ウガンダ  

2024年6月から7月初めにかけて、カセセ県は、コンゴ民主共和国との国境沿いで、隣国での感染者増加の報告を踏まえて、エムポックスのサーベイランスを強化しました。ブウェラの入国地点とブウェラ病院でスクリーニング担当者がオリエンテーションを行った後、7月11日に6人の疑い例が確認されました。疑い症例から検査用の検体が採取され、そのうち2例が7月15日にクレードIb MPXV陽性と判定されました。最初の確定症例は37歳の女性で、2番目の症例は22歳のコンゴ民主共和国国籍の女性です。これらは国内で確認された最初のエムポックス症例です。両症例とも7月11日に発症し、2024年7月15日にウガンダウイルス研究所でPCR検査により確認されました。
調査の結果、ウガンダ国外で感染したことが判明し、2024年8月12日現在、この2症例に関連する二次感染は確認されていません。同日までに39例の疑い例が報告されています。さらに、確定症例の接触者37例が追跡調査中です。8月20日現在、死亡例は報告されていません。
 

西アフリカ

コートジボワール

2024年7月、コートジボワールで2例の非致死的なエムポックス患者が確認されました。最初の症例は、リベリアとの国境にあるサンペドロ地方タブー地区で、7月1日に発熱、頭痛、皮疹で受診した46歳の患者です。エムポックスは7月3日にコートジボワール・パスツール研究所で、7月14日にはダカールのパスツール研究所で確定診断されました。2例目はアビジャンのクマシ保健地区の20歳の患者で、7月14日に皮疹と口腔粘膜病変を呈しました。これら最初の2症例との疫学的関連は確認されていません。
2024年8月7日現在、3つの保健地区で7人のエムポックス患者が確認されています: クマシ(1例)、タブー(1例)、ヨポウゴン-ウエ-ソンゴン(5例)。確認された症例のうち4例(57%)は男性で、7例すべてが15歳以上です。 40人の接触者が確認され、追跡調査中です。同国では以前にもエムポックスが報告されていたが、2022年に複数国での流行が始まって以来、症例は報告されていませんでした。2024年に新たに検出された症例はクレードIIのMPXVに属します。

エムポックスの疫学

エムポックスはモンキーポックスウイルス(MPXV)によって引き起こされる感染症です。MPXVには、以前はコンゴ盆地クレードと呼ばれていたクレードI(クレードIaと最近同定されたIbを含む)と、西アフリカクレードと呼ばれていたクレードII(クレードIIaとIIbを含む)の2つのクレードが知られています。クレードIaとクレードIbは、コンゴ民主共和国の南キブ州でクレードIbが出現したことに基づいて定義されました。クレードIaは現在、クレードIのIb以外のすべての株を包含すると考えられています。
MPXVは、ヒトの間で病変部、体液、呼吸器飛沫、汚染物との濃厚接触によって、または動物との接触や汚染されたブッシュミートの摂取によって動物からヒトへ感染します。通常、曝露から1週間以内に症状が出ますが、1~21日に症状が始まることもあります。症状は通常2~4週間続きますが、免疫力が低下している人ではもっと長く続くこともあります。通常、エムポックスでは発熱、筋肉痛、咽頭痛が最初に現れ、続いて皮膚や粘膜の発疹が現れます。リンパ節腫脹も典型的なエムポックスの特徴で、ほとんどの症例でみられます。 小児、妊婦、免疫力の弱い人は、合併症を起こしやすく、死亡するリスクもあります。
水痘、麻疹、細菌性皮膚感染症、疥癬、ヘルペス、梅毒、他の性感染症、および薬物アレルギーと区別することが重要です。エムポックスの患者は、ヘルペスのような他の性感染症を併発している可能性があります。あるいはエムポックスが疑われる子どもや大人が水痘を併発していることもあります。このような理由から、特に流行や新規の地域での最初の症例について、感染拡大を防ぐために公衆衛生や社会措置をとるべく検査診断を行うことが重要です。
MPXV感染の主な診断検査はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)です。診断に最も適した検体は、皮疹から直接採取されたもの(皮膚、体液、痂皮)で、強くこすることによって採取されます。皮膚病変がない場合は、口腔咽頭、肛門、直腸のぬぐい液で検査が可能です。しかし、口腔咽頭、肛門、直腸の検体が陽性であれば、MPXV感染が確認されますが、陰性であってもMPXV感染を否定するには十分ではありません。血液検査は推奨されません。血清学的検査では異なるオルソポックスウイルスを区別することができないため、その使用は、レトロスペクティブな症例分類や特別な研究のために抗体検出法を適用することのできるリファレンス・ラボラトリ―に限定されます。 
治療は臨床症状の管理、発疹のケア、痛みの管理、合併症の予防が基本です。また、緊急時やコンパッショネート使用(未承認薬剤の危機的な状況下における使用の承認)を通じて入手できる場合、特に重症例や合併症のリスクが高い患者にはテコビリマットなどの抗ウイルス薬を使用します。
エムポックスの予防には、現在3種類のワクチン(MVA-BN、LC16-KMB、OrthopoxVac(まだ商品化されていない))が各国において一部対象者に使用が可能です。WHOは、他のワクチンが入手できない場合、MVA-BNまたはLC16ワクチンの使用を推奨しています。
WHOは、曝露リスクが高い人にワクチン接種を推奨しています。

公衆衛生上の取り組み

調整
WHOアフリカ地域事務局(AFRO)は、加盟国がエムポックスの流行管理に必要な支援を受けられるよう、地域インシデントマネジメント支援チームを見直し、拡大しました。南アフリカで開催された重要な会議では、増加するエムポックス患者数に対処するための緊急対策が議論されました。また、深刻な状況を踏まえ、地域リスクアセスメントの見直しも提案されました。WHOは、アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)と技術調整会議を行い、合同のエムポックス対策チームを立ち上げました。さらに両機関は、特にワクチンに関する技術作業部会を強化し、国境を越えた準備態勢とサーベイランスを強化するなど、活動対応を加速させるための行動についても合意しました。
 
リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメント(RCCE 
南キブ州におけるRCCE活動計画の策定が進行中であり、取り組み調整のための定期的なパートナー会議が開催されています。DIGIMINDと呼ばれるオンライン・ソーシャル・リスニング・ソフトウェアが、エムポックスに関する議論や噂を収集するために使用されています。このデータは分析され、リスクコミュニケーション戦略に役立つ報告書が作成されます。南キブ州とサンクル州のジャーナリスト、ソーシャルモビライザー、コミュニティリーダーを含む141人の関係者を対象に、一連の報告会が行われました。
WHOは、複数の地域と言語で双方向番組を制作・放送し、市民への啓発活動を行い、家庭訪問や政治当局とのアドボカシー活動を行い、意識の向上とアウトブレイクの管理に努めました。
 
感染予防と管理(IPC
医療施設で安全にエムポックス患者をケアするためのIPCと水・衛生プログラム(WASH)の能力を迅速に評価するため、医療施設用のIPC迅速評価ツールが開発され、エムポックスの流行が活発な国々に配布されました。各国は、この迅速な評価を通じて確認された改善を支援するために、パートナーと協力することが奨励されています。 WHOはまた、医療・介護従事者向けに、個人防護具の着脱方法に関するポスターも発行しています。WHOはまた、現在流行が活発化している国のIPCフォーカルポイントと調整を図っています。WHOは、プロトコルの見直しや、エムポックスに関する国のIPCガイドライン、研修による医療・介護従事者の能力強化を通じて、南アフリカを支援しています。
 
備えと準備
WHOは、加盟国の準備態勢と能力を高めるための支援を行っています。さらに南アフリカは、感染報告のない州を中心に、WHOによる自治体レベルでの準備態勢の評価を受けました。WHOは、優先国および国境を接する国々における緊急時対応計画の策定を支援しており、準備態勢のギャップに対処するための技術的支援を継続する予定です。
 
サーベイランス
WHOは、罹患国から継続的にデータを収集・分析し、流行や感染パターンを特定するための疫学的ツールを活用して、エムポックスアウトブレイクの広がりと影響を監視しています。WHOはまた、リアルタイムの状況報告を提供し、関係者が複雑なデータを解釈できるようにダッシュボードを導入しています。一貫したサーベイランス活動を確保するため、ガイドラインや標準作業手順書の作成・配布とともに、各国のサーベイランスチームを対象とした研修会やワークショップを実施しています。
 
WHOは、特に国内避難民キャンプなどのリスクの高い地域において、サーベイランス・インフラの改善やコミュニティベースのサーベイランス・プログラムの実施を支援しています。短期的には、WHOは標準化されたプロトコルの導入、リアルタイム報告システムの配備、データの統合と共有の強化、現地の能力構築、早期警報システムの強化に重点を置いています。
 
検査機関
WHOは、南アフリカとリベリアの検査試薬の調達を支援し、検体の収集と輸送のためのロジスティクスを改善し、すべての医療施設においてタイムリーな配送と十分な供給を確保することを目指しています。各国は、進化の傾向や伝播先を監視するため、検体の一部について塩基配列を決定することが奨励されています。
 
ワクチン接種
WHOは、ワクチン製品の規制認可の取得、対象集団の特定、ワクチン接種戦略の策定において各国を支援しています。WHOは、コンゴ民主共和国のキンシャサで開催されたワクチン接種戦略ワークショップの技術支援を行いました。WHOは、既存のデータギャップに対処するための研究プロトコルの開発において各国を支援しています。
 
症例管理
WHOは南アフリカへのエムポックス治療薬(テコビリマット)の配布を支援しています。臨床ウェビナーへの参加と、エムポックスの遺体管理ガイドラインの見直しが進行中です。今後の取り組みとしては、コンゴ民主共和国および南アフリカのWHO各国事務所と連携し、臨床症例識別のためのジョブエイドを作成すること、軽症のエムポックス症例に対する在宅ケアのガイドラインを作成すること、近隣諸国と連携して地域的な備えを強化することなどが挙げられます。
 

国別の対応策

ブルンジ
・WHOの支援を受け、国家緊急事態対策センターが活動を開始しました。
・警報システムが整備され、警報の検証、エムポックス疑い症例の調査、確定症例の接触者を追跡するための現地訪問が行われています。しかし、現在、資源は限られており、すべてのサーベイランス活動を行うためには十分ではありません。
・研究室でのサンプル分析は、WHOやパートナーから技術的・試薬的支援を受けている国立標準研究所で行われていますが、資源的な問題に直面しています。
・他の医療施設には隔離環境がないため、ほとんどの症例は病院で治療・隔離されています。また、症例治療は、対症療法が中心です。
・RCCE活動は、住民にこの病気に感染しないように身を守る方法を啓発するために継続されています。とはいえ、患者や医療従事者の間でこの病気に対する意識は低く、あらゆるレベルで強化する必要があります。

ケニア
ケニアでエムポックス患者が確認されたことを受け、保健省は以下のような様々な対応策を講じています:
・公衆衛生緊急対策が開始されました。
・対応活動を調整するため、インシデントマネジメントチームが設置されました。
・国家的なエムポックス対応計画と症例管理ガイドラインの草案が作成されました。
・国内旅行の旅程に沿ったすべての患者の濃厚接触者の追跡が進行中です。
・ブシアからモンバサへの高速道路およびモンバサからタベタへの道路沿いのすべての郡で、すべての接触者およびその他の未確認の症例を特定するため、サーベイランスが強化されています。
・エムポックスの症例定義が作成され、全郡で共有されています。
・患者が渡航した近隣諸国の保健当局と国境を越えた連絡を取り、すべての接触者の可能性を追跡しています。
・迅速対応チームが派遣され、罹患国の詳細な調査を支援しています。
・近隣諸国におけるアウトブレイクの進展を監視し、地域感染のリスクを評価し、それに応じて対応策を調整しています。
・すべての郡で、発生状況、必要な予防措置、感染した場合の措置(石けんと水または手指消毒剤による頻繁な手洗い、早期治療の受診、病人との密接な接触を避けることなど)について、市民への啓発が続けられています。
・感染症が疑われる事例を報告し、感染症発生に関する詳細情報を求めるための緊急ホットライン番号が一般向けに提供されました。
・保健省は医療従事者や一般市民に対して勧告を発出し、リスクコミュニケーション・メッセージが作成され、一般市民や入国地点(PoEs; Point of Entry)に配布されました。

ルワンダ
2件のエムポックス患者が確認された後、保健省と関係者は、エムポックス患者が増加しているコンゴ民主共和国と国境を接するルシジ地区とルバブ地区に赴き、状況分析を行いました。ルバブ地区、ルシジ地区、キクキロ地区、ガサボ地区では、徹底的な接触者追跡とハイリスクグループでの積極的な症例検索により、症例封じ込めの努力が積極的に行われています。保健省は、パートナーと協力して、以下の対応策を継続して実施しています:  
 
調整リーダーシップ
・国家緊急対応チーム(RRT; Rapid Response Team)がルシジ地区とルバブ地区を支援し、迅速な状況評価を実施するために派遣されました。
・国のエムポックス緊急時対応計画と管理ガイドラインが作成されました。
・8月1日、利害関係者会議が開催されました。
・機能的なエムポックス対策本部が設置されました。
 
サーベイランス
・入国地点(PoEs; Point of Entry)、地域社会、医療施設においてサーベイランスが強化されました。
・疑い例、確定例とその接触者のデータを収集します。
・確定症例の濃厚接触者を追跡調査およびフォローアップします。
 
RCCE:
・オーディオ・ビデオスポットを開発します。
・エムポックス流行に関するテレビ・ラジオ番組を開始します。
・入国地点でのエムポックス啓発資料の翻訳を作成します。
・エムポックス啓発に関するソーシャルメディアおよびソーシャルメディアインフルエンサーの関与を促します。
 
症例管理とIPC
・確定症例の隔離と症例管理が進行中です。
・医療従事者を対象に、症例管理、IPC、疑い症例を検査に繋げる方法に関する研修を実施します。
・医療施設での症例確認、IPC、疑い症例の紹介に関する地域保健ワーカーのための研修を実施します。
 
診断と検査能力
・疑い症例の検査は継続中であり、国内にはPCRとゲノム配列解析を実施する能力があります。
・検査技師を対象に、エムポックスの検体採取に関する研修を実施します。
 
ウガンダ
ウガンダにおけるエムポックス患者の確認後、以下のような様々な対応策がとられています: 
・保健省とWHOを含むパートナーは、国と地区のRRTのメンバーを配備しました。
・保健省の国家タスクフォースによって承認された準備と対応計画が実施されています。
・同国は、現在のエムポックスの流行を含め、すべての公衆衛生上の緊急事態に対応するため、インシデント・マネジメント・システムを採用しています。
・すべての高リスクおよび中リスクの地方小郡と医療施設において、積極的な症例発見が進行中であり、疑いのある症例から検体を採取し、検査のために現場と国立研究所の両方に発送しています。
 
コートジボワール 
・政府は、2024年7月15日に公衆衛生緊急オペレーションセンターを稼働させました。
・疫学的サーベイランスについては、サーベイランス・ガイダンスの準備と配布、接触者の追跡や健康観察などが強化されています。すべての症例が調査され、積極的な症例および接触者の調査が続けられています。
・診断能力が強化され、サンプリングキットが提供されました。
・病院と地域社会では治療と隔離が続けられており、症例と医療施設周辺のIPC対策が強化されています。
・また、マスメディアを通じて予防対策について市民に知らせる啓発キャンペーンも実施されています。

WHOによるリスク評価

現在のアフリカ大陸におけるエムポックスの流行状況は、前例のない広がりをみせています。少なくとも4カ国で初めて患者が確認され、コートジボワールのように再流行が報告されている国もあります。これらの国々における感染経路はまだ完全には解明されていませんが、ヒトからヒトに限定した感染を含む可能性が高いです。
クレードI  MPXV は、以前から発生がみられていた国以外で、今回初めて確認されました。東アフリカおよびそれ以南の新たな発生国での最初の感染報告は、コンゴ民主共和国からの出入国に関連していますが、ブルンジでのアウトブレイクの拡大は、一部の環境ですでに持続的な地域内感染が起きている可能性を示唆しています。確認された症例間の疫学的なつながりは必ずしも知られていないため、異なる国々で複数の感染経路による連鎖が続いている可能性があり、地域社会で未検出の症例がさらに増える可能性があります。入手可能な疫学的データによれば、このクレードは、セックスワーカーとその顧客のネットワーク内で確認された性的接触を含む密接な身体的接触により、成人の間で急速に広がっています。ウイルスがさらに広がるにつれ、罹患グループも変化しており、家庭内などでもウイルスが定着しています。
人口密度が高く、リスクの高い性的ネットワークが存在する地域や集会所では、感染は爆発的な大流行を引き起こし、人口の移動や治安の悪化によってさらに深刻化する可能性があります。逆に、症状がそれほど重くない場合もあり、移動中の医療サービスへのアクセスが制限されたり、スティグマへの懸念から罹患患者が医療を受けることを避けたりするため、商業的なルートを通じてウイルスが静かに広がることもあります。 
天然痘に対するワクチン接種は、過去に天然痘とエムポックスの相互予防効果があることが示されましたが、天然痘根絶後の1980年に天然痘への自然曝露と天然痘ワクチン接種プログラムが終了したため、天然痘ワクチン接種による免疫は42歳から50歳以上の人にしか存在しません。新たに感染が確認された4カ国は、いずれもエムポックスワクチンや抗ウイルス剤を入手できない状況です。 
以上のことから、WHOはコンゴ民主共和国東部および近隣諸国におけるエムポックスのリスクを高リスク、コートジボワールおよびその他の西アフリカ諸国におけるリスクを中リスクと個別に評価しています。このリスクは、一般住民、特にエムポックス患者と性的接触がある人、また医療従事者がエムポックス患者の診察、検査、治療の際に適切な予防措置をとっていない場合に適用されます。   
現在のところ、上記5カ国では死亡例は報告されていませんが、小児、免疫不全者(HIV感染症がコントロールされていない人や進行したHIV感染症患者を含む)、妊婦など、エムポックスが重症化しやすい脆弱な集団の間で感染が広がると、健康への影響が増大する可能性があります。
 
アフリカにおけるエムポックスの流行は今後も続くことが懸念されます: 
・現地での感染が過小に検出され、過小に報告されている可能性があります。報告された症例の多くは、疫学的な関連性が確立されておらず、異なる国や国内の異なる場所で確認されています。
・各国政府は、国内および世界のパートナーからの支援を受け、緊急対応を開始していますが、一部の国では対応に必要な資源が限られており、資源の動員も遅れています。国や州・地域レベルでしっかりとした対応を確保するためには、技術的・財政的支援が必要です。
・政府やパートナーは、罹患患者への適切なケアや、高い感染リスクにさらされている人々へのワクチン導入の支援に総動員されていますが、これらの対策は現在アフリカのほとんどの国で実施されておらず、その獲得と展開にはまだ時間がかかります。
・また、一部の国ではこれまでエムポックスが報告されたことがないため、新たに罹患した国の医療・介護従事者の間では、本疾患に関する知識や識別能力だけでなく、一般市民の認識もまだ限定的です。
・同時に、世界的には複数国にまたがるエムポックスの流行もまだ続いています。アフリカ以外の国々では、ヒトからヒトへの感染の抑制が達成されたと思われていたものの、散発的な症例や集団発生が検出され続けており、アフリカ地域では、これまでにない症例数と報告国の増加が確認されており、特にコンゴ民主共和国における地域内および全世界でのさらなる感染のリスクが高まっています。

WHOからのアドバイス

一般
 
すべての国の保健当局および臨床医・医療従事者は、クレードIIb MPXVに関連した世界的なエムポックスの流行が全地域で進行中であること、また、クレードI MPXVの流行が中央および東アフリカで増加していること、したがって、国境を越えた国際的な感染拡大のリスクが依然として存在することを認識すべきです。
 
WHOは、2023年8月に発出され、さらに1年間延長されたWHO事務局長による継続的な勧告と、PHEIC宣言後に事務局長によって発出された暫定勧告に各国が引き続き従うことを強く勧告します。
 
各国は、WHOの暫定ガイダンスの更新(ウイルスのゲノム配列の決定を含む)に沿って、エムポックスの疫学サーベイランスを実施し、検査室での診断能力を強化する必要があります。さらに、各国はMPXVの両クレードを検出できる検査診断能力を確保する必要があります。
 
それぞれの状況に適したリスクコミュニケーションと地域社会への働きかけの持続的な実施、リスクのある人へのワクチン接種の維持または開始(可能な場合)、最適な症例管理、感染対策の遵守、異なる状況における感染様式をよりよく理解するための研究の強化、患者のニーズに適応した迅速診断法と治療法の開発への持続的な支援が必要です。
 
流行が依然として少ない地域では、保健当局は、ヒトからヒトへのエムポックス感染の根絶を達成し、アウトブレイクへの対応能力を維持するよう努力すべきです。
 
臨床診断または検査でエムポックスと確定診断された者は、感染期間中の隔離を含め、地域の状況に応じて保健当局の指示に従うべきです。エムポックス患者は、エムポックスの症状がなくなり、病巣のかさぶたが剥がれ落ちるまでは、海外旅行を含め、エムポックスの治療を受けるためでない限り、旅行を避けるべきです。確定症例の接触者は、症状の出現の可能性を監視する期間である21日間は、行動を制限すること(必要であれば性交渉も控えること)が求められます。
 
ワクシニアウイルスからなる天然痘ワクチンは、ウイルスの抗原性の類似性により交差防御を行い、エムポックスも予防します。エムポックスワクチン接種は、エムポックスに感染する可能性のある人に推奨されます。集団予防接種は、現時点では必要とされておらず、推奨されていません。
 
テコビリマットなど、現在エムポックスに対する有効性が評価中の特定の抗ウイルス剤については、WHOからのコンパッショネートユースの要請、WHO MEURIプロトコルに基づく使用申請、または製造業者からの直接購入により、入手が可能です。
 
エムポックスとHIV感染の疫学的関連、感染と重症化へのそれぞれの共通の危険因子、共感染の場合の最適な症例管理、ワクチンや治療アプローチの有効性など、さまざまな状況において知識を深めることが不可欠です。
 
コミュニティでは
RCCE活動は、影響を受けたコミュニティがリスクや保護行動を認識し、スティグマや差別を理解し、予防し、闘うよう動機付ける上で不可欠です。主要な対象者を特定する必要があり、背景によっては、医療専門家、コマーシャルセックスワーカー、男性と性交渉を持つ男性、トランスおよびジェンダーの多様な人々、性行為が行われる場所やイベントで働く人々や参加する人々、より重篤な疾病のリスクのある人々(未治療またはコントロール不良のHIV感染者を含む)が含まれます。
 
リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメントに関する詳しいガイダンスについては、WHOのエムポックス用RCCEツールキットを参照してください。
 
また、エムポックスの感染を予防・制御するために、コミュニティ内でIPCとWASH対策が実施されることが極めて重要です。非重症のエムポックスと診断された患者は、IPCとWASHの条件が家庭環境で満たされていることが家庭評価で確認されれば、感染期間中は自宅に隔離することができます。自宅でケアされる患者は、他の家族とは別の、換気のよい専用の部屋(例えば、頻繁に窓を開けるなど)にとどまるべきです。食器、リネン、タオル、電子機器、ベッドなどの物品は、個別にエムポックス患者専用とし、共有しないようにします。医療従事者または介護従事者が自宅で介護を行う場合、適切な個人防護具(PPE)(手袋、ガウン、眼保護具、レスピレーターマスク)を着用し、WHOの「5つの場面」に従って石鹸と水またはアルコールベースの手指消毒剤を使用して手指衛生を行い、使用した患者介護器具や頻繁に触れる表面や物品を洗浄・消毒する必要があります。感染者の汚染された洗濯物は、他の洗濯物と混ぜてはならず、空気中に飛沫や粒子を発生させない方法で管理すべきです。汚染された洗濯物は、洗剤を使用して洗濯機で洗うことができます[1]。感染者のエリアで発生した廃棄物は、一般廃棄物(リサイクルしない)の流れに従って廃棄する前に、丈夫な袋に入れ、しっかりと口を縛るべきです。廃棄物処理後は直ちに手指衛生を行います。
 
エムポックスの臨床管理と感染予防・管理については、 地域環境におけるIPC対策についての詳しいガイダンス「エムポックスの臨床管理と感染予防・管理:中間迅速対応ガイダンス」を参照してください。
 
 
医療現場において
医療現場でIPCとWASH対策を実施することは、エムポックスの感染を予防・制御するために必要です。医療・介護従事者に、エムポックスの感染様式と、エムポックスの感染を予防・制御するための標準予防策および感染予防策を含む制御策について教育することが重要です。エムポックスのスクリーニングを行い、適切な患者配置と隔離を行うべきです。医療施設は、医療・介護従事者がPPE(手袋、ガウン、眼保護具、呼吸器)を利用し、適切に着用し、石鹸と水またはアルコールベースの手指消毒剤を使用した手指衛生のためのWHOの「5つの場面」を遵守し、患者環境の頻繁な清掃と消毒を確実に行うべきです。医療・介護従事者は、可能な限り、先のとがったものの取り扱いや廃棄を安全に行い、検体を採取する際には病変部での先のとがったものの使用を避ける(例えば、水疱・嚢胞の上蓋をはがす等の処置を避ける)よう注意喚起されるべきです。エムポックス患者の体液および固形廃棄物はすべて感染性廃棄物として処理されるべきです。エムポックス患者のケアに必要なIPC対策に関する詳しいガイダンスは、「エムポックスの臨床管理と感染予防・管理:中間迅速対応ガイダンス」を参照してください。
 
WASHおよび医療廃棄物管理サービスが完全に機能することは、IPCの実践と患者の安全およびケアの質を確保する上で極めて重要です。医療施設が必須のWASH基準に準拠していることを確認するには、WASH FIT:「 医療施設における水、衛生設備、衛生を通してケアの質を向上させるための実践的ガイド」[2]を参照してください。  
 
推奨される対策で身を守ると同時に、医療・介護従事者は、治療のために来院したエムポックス患者にスティグマが生じないよう配慮するとともに、必要な場合には心理的サポートを提供するようにしなければなりません。
 
入国時
当局、医療・介護従事者、地域団体に対し、エムポックスがリスクをもたらす可能性のある行事や集会への渡航前、渡航中、渡航後に、旅行者自身や他者を守るための関連情報を提供するよう奨励することが推奨されています。
WHOは、現在の流行に関する入手可能な情報に基づき、いかなる渡航や貿易の制限も行わないよう勧告しています。
 
[1] Department of Health and Aged Care. (2022). Interim guidance on monkeypox at home or in a nonhealthcare setting. Accessed at: https://www.health.gov.au/sites/default/files/2022-12/iceg-interim-guidance-on-the-infection-prevention-and-control-of-monkeypox-at-home-or-in-a-non-healthcare-setting.pdf
[2] Water and Sanitation for Health Facility Improvement Tool (WASH FIT). (n.d.). Available at: https://www.who.int/publications/i/item/9789241511698 

出典

World Health Organization  (22 August 2024). Disease Outbreak News; Mpox – African Region
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2024-DON528


海外へ渡航される皆様へ

エムポックスは、モンキーポックスウイルス(MPXV)によって引き起こされる感染症です。症状には特徴的な発疹、発熱、頭痛、筋肉痛、リンパ節の腫れ、疲労感が含まれます。
 
1.情報収集:
・渡航先のエムポックスの発生状況や、FORTHウェブサイト、現地の健康当局が発表する最新の情報を確認してください。
・WHOや各国の保健機関のウェブサイトを定期的にチェックしましょう。
 
例)2022-24 Mpox (Monkeypox) Outbreak: Global Trends
https://worldhealthorg.shinyapps.io/mpx_global/
 
2.個人防護:
・体調不良や明らかな皮膚病変のある人との接触、不特定多数、見知らぬ人やコマーシャル・セックスワーカーとの性交渉を避けることで感染リスクを下げることができます。
・肌と肌が触れ合う可能性が高い、参加者の露出度が高いような感染のリスクが高い場所やイベントへ行くことは避けるようにしましょう。
・一般的な感染対策として、手指衛生を徹底し、手洗いを頻繁に行いましょう。
 
3.健康管理:
・渡航中に特徴的な皮疹をはじめ、エムポックスを疑うような症状があらわれた場合は、エムポックスの可能性を伝えたうえで、すぐに医療機関を受診してください。
・渡航後21日間は、自身の健康状態を観察し、発熱、発疹、リンパ節の腫れなどの症状が現れた場合は医療機関に事前に連絡をした上で、速やかに受診しましょう。
・感染が疑われる場合は、他の人との接触を避け、特に性的接触は控えてください。
・エムポックスと診断された場合は、保健所や医療機関の指示に従い、必要な治療を受け、自宅等における感染対策を徹底しましょう。
 
これらのアドバイスに従い、安全な旅行を心がけ、エムポックスの感染リスクを減らしましょう。

備考

厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成。

This translation was not created by the World Health Organization (WHO). WHO is not responsible for the content or accuracy of this translation. The original English edition “Antimicrobial Resistance, Hypervirulent Klebsiella pneumoniae - Global situation. Geneva: World Health Organization; 2024. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO.
This is an adaptation of an original work “Antimicrobial Resistance, Hypervirulent Klebsiella pneumoniae - Global situation. Geneva: World Health Organization (WHO); 2024. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition.