オロプーシェ熱-アメリカ大陸地域

状況概要

2024年8月23日に本事例に関する前回のDisease Outbreak Newsが発表されて以来、2024年にアメリカ大陸地域で確認されたオロプーシェ熱が、新たに3カ国と1地域(エクアドル共和国、ガイアナ協同共和国、パナマ共和国、ケイマン諸島)から報告されました。さらに、オロプーシェ熱の輸入症例がカナダ、アメリカ合衆国、ヨーロッパ地域諸国から報告されています。2024年11月25日現在、アメリカ大陸地域では、2例の死亡例を含む合計11,634例のオロプーシェ熱症例が、以下の10カ国と1地域で確認されています: ボリビア多民族国、ブラジル連邦共和国、カナダ、ケイマン諸島、コロンビア共和国、キューバ共和国、エクアドル共和国、ガイアナ協同共和国、パナマ共和国、ペルー共和国、アメリカ合衆国。
入手可能な情報に基づき、世界保健機関(World Health Organization; WHO)は、このウイルスがもたらす公衆衛生上のリスクは、地域レベルでは高く、世界レベルでは低いと評価しています。この地域ではアルボウイルスの流行シーズンが始まっているため、WHOは感染リスクのある国々に対し、疫学的・昆虫学的サーベイランスを強化し、住民の予防対策を強化するよう呼びかけています。これは、ウイルスの地理的拡大や、新たな媒介昆虫や垂直感染を含む新たな感染経路の出現により、一般住民と、妊婦やその胎児、新生児などの脆弱な集団の両方に影響を及ぼす可能性があるため、極めて重要です。

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発生の詳細

2024年8月23日に本事例に関する前回のDisease Outbreak Newsが発表されて以来、アメリカ大陸地域ではさらに3カ国と1地域(エクアドル共和国、ガイアナ協同共和国、パナマ共和国)からオロプーシェ熱が確認されたと報告されています。さらに、ケイマン諸島、カナダ、アメリカ合衆国、ヨーロッパ地域の数カ国からオロプーシェ熱の輸入症例が報告されました。
2024年1月1日から11月25日の間に、アメリカ大陸地域では、2例の死亡例を含む、11,634 例のオロプーシェ熱の確定例が報告されています: ボリビア多民族国(356例)、ブラジル連邦共和国(9,563例、うち死亡例2例)、カナダ(輸入症例2例)、ケイマン諸島(輸入症例1例)、コロンビア共和国(74例)、キューバ共和国(603例)、エクアドル共和国(2例)、ガイアナ協同共和国(2例)、パナマ共和国(1例)、ペルー共和国(936例)、アメリカ合衆国(輸入症例94例)。さらに、ヨーロッパ地域の国々でもオロプーシェ熱の輸入症例が報告されています(30例)(1)。
ブラジル連邦共和国とキューバ共和国では、オロプーシェウイルスの垂直感染の事例とその転帰が報告されています。ブラジル連邦共和国では垂直感染3例(胎児死亡2例、先天異常1例)を確認し、調査中の症例は胎児死亡15例、自然流産5例、先天異常3例であると報告されています[1]。 さらにキューバ共和国では9月に先天異常1例を確認し、さらに2例は調査中です。
 
図1. 2024年に確認されたオロプーシェ熱の症例数(アメリカ大陸の国別、発症疫学週別)

*出典 PAHO/WHOが各国から報告されたデータを基に作成。
 
以下は、2024年11月25日現在、アメリカ大陸でオロプーシェ熱症例が確認されたと報告された各国の状況の概要です。

ボリビア多民族国:2024年1月1日から10月5日の間に、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査で確認されたオロプーシェ熱症例は356例でした。感染は以下の3つの県で報告されています:ラパス県が75.3%(268例)、ベニ県が21.3%(76例)、パンド県が3.4%(12例)。この病気の流行地とされる16の市町村で症例が報告されており、最も多いのはラパス県のイルパナで33%、次いでラパス県のラ・アスンタで13%、ラパス県のチュルマニ、ベニ県のグアヤラメリンでそれぞれ12%となっています。
症例の半数は女性(179例)であり、症例数が最も多い年齢層は30~39歳で20%(70例)を占めます。オロプーシェウイルス感染に関連すると考えられる死亡例は報告されていません。さらに、2024年3月23日から4月13日の間に、ラパス県の3つの市町村の患者において、オロプーシェ熱とデング熱の重複感染が10例報告され、その全員が血清型別RT-PCR検査でデング熱陽性と判定され、DENV-1(2例)とDENV-2(8例)でした(2)。
 
ブラジル連邦共和国: 2024年1月1日から11月25日の間に、9,563例のオロプーシェ熱がRT-PCRにより確認されました。ほとんどの症例は北部の州の自治体で報告されていますが、現在までに国内27州のうち22州で症例が報告されています。オロプーシェ熱の流行地域とされるアマゾン地域は、国内で報告された症例の70%を占め、以下の7つの州から症例が報告されています: アマゾナス州(3,231例)、ロンドニア州(1,711例)、アクレ州(273例)、ロライマ州(277例)、パラー州(157例)、アマパ州(128例)、トカンチンス州(8例)(3)。さらに、アマゾンに属さない以下の15の州で州内での感染が記録されており、そのうちのいくつかはこれまで症例が報告されていませんでした: バイーア州(889例)、エスピリト・サント州(1,763例)、セアラ州(249例)、ミナス・ジェライス州(194例)、サンタ・カタリーナ州(178例)、ペルナンブコ州(144例)、リオデジャネイロ州(116例)、アラゴアス州(116例)、セルジッペ州(34例)、マラニョン州(33例)、ピアウイ州(30例)、マットグロッソ州(18例)、サンパウロ州(8例)、パライバ州(5例)、マットグロッソ・ド・スル州(1例)。
症例の52%(4,995例)は男性で、症例数が最も多い年齢層は20~29歳で、21%(1,963例)を占めています(3)。
ブラジル連邦共和国の国際保健規則(IHR ; International Health Regulation)国家連絡窓口(NFP ; National Focal Point)は、バイーア州で過去に遡って検出されたオロプーシェウイルス感染による2例の死亡例を報告し1、以下の6例が調査中であることを報告しました:サンタ・カタリーナ州が感染源である可能性が高い症例がパラナ州で1例、エスピリト・サント州で2例、アクレ州で1例、アラゴアス州で1例、マットグロッソ州で1例(4)。2さらに、2024年8月12日、ブラジル連邦共和国はオロプーシェウイルス関連脳炎を報告していますが、この症例はピアウイ州在住の男性です(3)3。2024年11月16日現在、3例の垂直感染が確認されています[4]。胎児死亡が2例(ペルナンブコ州とセアラ州)、先天異常が1例(アクレ州)です。国内で調査中の症例としては、ペルナンブコ州の胎児死亡15例、アクレ州(2例)とバイーア州(1例)の先天異常3例、ペルナンブコ州の自然流産5例が特定されています(3-5)。
 
コロンビア共和国:2024年1月1日から10月5日の間に、同国の以下の3つの県で74例のオロプーシェ熱患者が確認されました:アマゾナス県(70例)、カケタ県(1例)、メタ県(1例)。
さらに、ブラジル連邦共和国のタバティンガ市からの旅行者から2例が確認されました。これらの症例は、コロンビア国立衛生研究所が2024年に実施した、デング熱サーベイランス(38症例)と発熱症候群症例(36症例)の調査による後方視的な検査室での症例確認戦略によって同定されました。症例の半数以上(51.4%;38例)は女性であり、症例数が最も多い年齢層は10~19歳で36.5%(27例)でした。オロプーシェウイルス感染に関連すると思われる死亡例は記録されていません。
デング熱との重複感染は、アマゾナス県ではレティシア市で4例(DENV-1が2例、DENV-2が2例)、プエルト・ナリニョ市で1例(DENV-3)、メタ県ではグアマル市で1例(DENV-4)の計6例が報告されています。垂直感染とその転帰のサーベイランスについては、2024年10月3日までに、レティシア市で、18歳(妊娠29週で発症)と22歳(妊娠34週で発症)の2例の妊婦でのオロプーシェ熱が確認されています。両者とも経過は良好で、子どもも合併症なく生まれました。現在までのところ、いずれの乳児にも先天性異常、神経学的症候群、神経発達障害の兆候は見られていません[5]。
 
キューバ共和国: 2024年5月27日から11月25日の間に、合計603例の確定症例が報告されました。 症例は非特異的熱性症候群のサーベイランスを通じて引き続き確認されており、国内の15の州の109の市町村で症例が記録されています。ハバナ州(174例)、サンティアゴ・デ・クーバ州(75例)、ピナール・デル・リオ州(47例)、シエンフエゴス州(39例)が確定症例の55%を占めています6
症例の半数以上が女性(55%、331例)であり、19~54歳の年齢層(53%、320例)の割合が最も高くなっています。 2024年9月19日、キューバはオロプーシェウイルス感染に関連したギラン・バレー症候群の3例を報告しました。3例はそれぞれ51歳、53歳、64歳の女性2例と男性1例で、6月に発症しました。これらはサンティアゴ・デ・クーバ州のサン・ルイス市(1例)とサンティアゴ・デ・クーバ市(2例)の住民で、血清、脳脊髄液、尿検体が採取され、オロプーシェウイルスのRT-PCR検査で陽性となりました。
妊婦では7例のオロプーシェ熱が確認され、うち2例は新生児を出産し先天異常は検出されませんでした。一方、感染による病因が疑われる中枢神経系の先天異常の3例が、全国的な妊産婦紹介サービスを通じて確認され、このうち1例はウイルス学的検査を受け、胎児の心臓の血液からオロプーシェウイルスの陽性結果が出ましたが、他の2例については調査中です。
 
エクアドル共和国: 2024年10月5日現在、国立公衆衛生研究所によるデング熱陰性検体の後方視的分析で検出されたオロプーシェ熱が2例報告されています。最初の症例は、6月11日に症状を発症したボリバル州の62歳の男性でした。2例目は7月17日に発症したロス・リオス州の36歳の患者です。両患者とも最近の渡航歴はありません。いずれの患者も入院を必要とせず、完全に回復しています。
 
ガイアナ 協同共和国:2024年9月8日から14日にかけて、オロプーシェ熱の検査室確定例が2例報告され、同国で初めてこの病気が検出されました。最初の症例は、2024年8月21日に症状を呈した47歳の患者でした。この症例は2024年8月24日に医療機関を受診しました。血液検体が採取され、9月3日に行われたRT-PCR検査でオロプーシェウイルスが陽性でした。2例目は、2024年9月2日に症状を呈した42歳の患者です。この症例は2024年9月3日に医療機関を受診しました。血液検体が採取され、9月7日に行われたRT-PCR検査でオロプーシェウイルスが陽性でした。両症例とも症状発現の少なくとも14日前からマハイカ・ベルビセ州の同じ地域に居住しており、両症例とも渡航歴は報告されていません。
 
パナマ共和国: 2024年11月15日、パナマ共和国のIHR NFPは、2024年で初めてとなるオロプーシェ熱患者を報告しました。この症例はパナマのゴルガス記念健康研究所の検査室で確認されました。症例はコクレ県の30歳から35歳で、最近パナマ共和国内の旅行歴があります。2024年8月27日に発症し、デング熱の疑いがあると診断されました。入院の必要はなく、自宅で回復しました。この症例は、当初はデングウイルス陰性であったデング熱様症状を呈する患者の検査室サーベイランス戦略を通じて確認されました。11月15日、この症例はRT-PCRによりオロプーシェウイルス陽性であることが確認されました。この症例は回復したものの、ウイルスに曝露された正確な場所・伝播がまだ特定されていないため、現在調査中です。
 
ペルー共和国:2024年1月1日から10月5日の間に、国内の8つの県で936例のオロプーシェ熱確定例が報告されました。その県とは、ロレート県(466例)、マドレ・デ・ディオス県(312例)、ウカヤリ県(138例)、フアヌコ県(15例)、ジュニン県(2例)、トゥンベス県(1例)、サン・マルティン県(1例)、プーノ県(1例)です。症例の半数以上(51%;476例)は男性で、最も症例数の多い年齢層は30~39歳で、37%(348例)を占めていました。死亡例はなく、垂直感染の可能性も報告されていません。
 
非流行国・地域における輸入症例
カナダ: 2024年9月21日現在までに、キューバへの渡航歴のあるオロプーシェ熱患者2例を確認しています。
 
ケイマン諸島: 2024年9月16日、カリブ公衆衛生局は、キューバに渡航歴のあるケイマン諸島の成人女性のオロプーシェ熱の輸入症例を確認しました。患者は帰国後の8月10日に発熱や筋肉痛などの症状を発症しました。8月12日にケイマン諸島で行われたオロプーシェウイルスの初回検査で陽性となり、8月15日に採取された回復期の検体からカリブ公衆衛生局のリファレンス・ラボラトリ―で確定されました。
 
アメリカ合衆国:2024年10月8日現在、フロリダ州(90例)、カリフォルニア州(1例)、コロラド州(1例)、ケンタッキー州(1例)、ニューヨーク州(1例)で94例のオロプーシェ熱の輸入例が確認されています。症例の年齢中央値は51歳(6歳から94歳の範囲)で、48%が女性でした。合計3例が入院しました。症例のうち2例は中枢神経疾患を呈し、死亡例は報告されておらず、全例にキューバへの渡航歴がありました。
 
さらに、2024年6月2日から7月20日の間に、WHOヨーロッパ地域の以下の3カ国で30例のオロプーシェ熱の輸入症例が確認されました:ドイツ連邦共和国(3例)、スペイン王国(21例)、イタリア共和国(6例)。このうち20例はキューバ共和国への渡航歴、1例はブラジル連邦共和国への渡航歴があり、これらの症例はこの地域で初めて確認された症例です。

オロプーシェ熱の疫学

オロプーシェ熱は、ペリブニヤウイルス科オルソブニヤウイルス属の分節型1本鎖RNAウイルスであるオロプーシェウイルスによって引き起こされるアルボウイルス感染症の一つです。このウイルスは中南米およびカリブ海地域で循環していることが確認されています。オロプーシェウイルスは主に、森林地帯や水辺の周囲に生息するヌカカ(Culicoides paraensis, midge、またはネッタイイエカ( Culex quinquefasciatus,  mosquitoes)に刺されることでヒトに感染します。ウイルスの循環には、都市型サイクルと森林型サイクルがあると考えられています。森林型サイクルでは、おそらく霊長類、ナマケモノ、鳥類が脊椎動物の宿主と考えられていますが、媒介となる節足動物は確定されておりません。都市型サイクルではヒトが増幅宿主であり、主にヌカカに刺咬されることで感染します。垂直感染がブラジルおよびキューバで確認されており、いくつかの症例はさらなる調査を行っています。現在までのところ、これ以外のヒトからヒトへのオロプーシェウイルス感染の証拠は確認されていません。
オロプーシェ熱の症状はデング熱に似ており、感染から4~8日後(3~12日にわたることもある)に始まります。発症は突然で、通常は発熱、頭痛、関節のこわばり、痛み、悪寒を伴い、時には吐き気や嘔吐が7日間続くことがあり、最大60%の症例で、発熱が改善後に症状が再燃することがあります。ほとんどの症例は7日以内に回復しますが、回復に数週間を要する患者もいます。重篤な臨床症状を呈することは稀ですが、発症後2週目に無菌性髄膜炎を引き起こすことがあります。
オロプーシェ熱に対する特異的な抗ウイルス治療法やワクチンは現在ありません。最近発表された論文では、キューバ旅行を終えてイタリアに帰国した際にこの病気と診断された患者の検体から、血液、血清、尿、さらには精液などの体液中に複製能を持つオロプーシェウイルスが検出されたことが記載されています。このウイルスは、発症から16日後までの検体の培養から検出されました。しかし、この結果は性行為による感染を確認する決定的なものではなく、この種の感染の報告はありません7

公衆衛生上の取り組み

地域レベル:
  • 加盟国に注意を喚起し、実施すべき行動を勧告するため、疫学的な警告と最新情報が発出されました。また、保健担当者を対象とした地域および国のウェビナーを通じて、情報が広められました。
  • 検査診断のためのアルゴリズムが開発され、普及しています。分子生物学的検査(RT-PCR)とウイルスの性状解析(全ゲノム解析)に関するトレーニングが、ワークショップや遠隔支援を通じて提供され、重要な試薬が配布されました。地域的・国家的な取組みの結果、中南米・カリブ海地域の33カ国中23カ国で、分子生物学的検査が利用できるようになりました。WHOは、必要に応じてこれらの能力を拡大するよう努めています。
  • 入手可能な臨床情報を検討し、暫定的な症例定義(疑い、可能性が高い、確定、垂直感染)を精査しています。
  • 本疾患の疫学的分析を開発するために、地域レベルでバーチャルな共同研究スペースが設けられています。
  • オロプーシェウイルスに曝露された妊婦から生まれた乳児の転帰の特徴を明らかにするための一般的な研究プロトコルが作成され、共有されています。
  • WHOの専門家は、アウトブレイクが発生している国々へ支援を提供しています。
  • オロプーシェウイルス媒介昆虫の昆虫学的サーベイランスと予防対策に関する中間ガイダンスを作成し公表します。
  • アメリカ大陸におけるオロプーシェウイルスの媒介昆虫であるヌカカの生物学、生態学、サーベイランスに関する地域ワークショップが、2024年11月18日から22日まで、ブラジル連邦共和国のマナウス市にあるオズワルドクルズ財団研究所にて開催され、8カ国が参加しました。

WHOによるリスク評価

アメリカ大陸では、歴史的にアマゾン地域でオロプーシェ熱の集団発生が起こっています。ブラジル連邦共和国、コロンビア共和国、エクアドル共和国、仏領ギアナ、パナマ共和国、ペルー、トリニダード・トバゴ共和国の農村と都市部の両方で、オロプーシェ熱の発生が数多く報告されています(6)。
現在進行中の流行は、疫学的・昆虫学的サーベイランスを強化し、住民の予防対策を強化する必要性を浮き彫りにしています。これは、ウイルスの感染地域が拡大し、一般住民と妊婦やその胎児、新生児などの脆弱な集団の双方に影響を及ぼす可能性のある新たな感染経路や新たな媒介昆虫を含め、疾患のスペクトラムをよりよく理解する必要性が高まっているためです。
入手可能な情報に基づき、WHOはこのウイルスがもたらす公衆衛生上のリスクは、地域レベルでは高く、世界レベルでは低いと評価しています。

WHOからのアドバイス

ヌカカが繁殖する場所が人間の居住地に近いことは、オロプーシェウイルス感染の重大な危険因子です。予防戦略は媒介昆虫の防除対策と個人防護対策に基づいています。媒介昆虫対策としては、繁殖場所を制御することでヌカカの個体数を減少させる方法が挙げられ、ヌカカの幼虫を生息させる自然および人工的な水のある生息地の数を減らすことで、リスクのある地域周辺の成虫個体数を減少させることができます。個人防護対策としては、機械的バリア(蚊帳)、虫除け器具、虫除け加工された衣服、忌避剤などを用いてヌカカに刺されないようにすることが重要です。デルタメトリンなどの化学殺虫剤やDEET(N,N-Diethyl-meta-toluamide)などの忌避剤は、ヌカカやネッタイイエカからの防御に有効であることが実証されています。
オロプーシェ熱の臨床症状を考慮し、アメリカ大陸のサザンコーン地域ではアルボウイルスシーズンの始まりであることを考慮すると、疫学的(妊産婦の健康と出生異常のデータを含む)および昆虫学的サーベイランスを強化し、症例を確認し、流行の特徴を分析し、疾患の傾向を監視するためには、検査室での診断が不可欠です。
オロプーシェウイルスはアメリカ大陸で新たに出現した、十分に同定されていないアルボウイルスであるため、陽性検体や確定症例が確認された場合には、IHR附録第2に基づいて 、IHRにより確立されたルートを通じて通知する必要があります。
WHOは現時点で得られている情報に基づき、渡航や貿易の制限を実施しないよう助言しています。

追補

(1)Pan American Health Organization / World Health Organization. Epidemiological Update: Oropouche in the Americas Region, 15 October 2024. Washington, D.C.: PAHO/WHO; 2024.Available from: https://www.paho.org/sites/default/files/2024-10/2024-oct-15-epi-update-oropouche-engfinal2.pdf
(2)Bolivia (the Plurinational State of) International Health Regulations National Focal Point (IHR NFP). E-mail information dated 10 October 2024. La Paz; 2024. Unpublished.
(3)Ministério da Saúde do Brasil, Painel Epidemiológico. Brasilia; COE; 2024. [cited 25 November 2024]. Available in Portuguese from: https://www.gov.br/saude/pt-br/assuntos/saude-de-a-a
(4)Ministério da Saúde do Brasil.  Informe Semanal nº 23 - Arboviroses Urbanas - SE 46, 18 de Novembro de 2024. Brasilia; COE; 2024. [cited 28 November 2024]. Available in Portuguese from: https://www.gov.br/saude/pt-br/assuntos/saude-de-a-a-z/a/arboviroses/informe-semanal/informe-semanal-se-46-2024.pdf/view .
(5)Bandeira, A, Barbosa, A, Souza, M, Saavedra, R, Pereira F, Santos S, et al. Clinical profile of Oropouche Fever in Bahia, Brazil: unexpected fatal cases. SciELO Preprints. 2024-07-16 (version 1);2024. Available from: https://doi.org/10.1590/SciELOPreprints.9342
(6)Peru Centro Nacional de Epidemiología, Prevención y Control de Enfermedades. Indicadores de Riesgo Epidémico Sala virtual de situación de salud. Lima: CDC Peru; 2024. [cited 26 July 2024]. Available from: https://www.dge.gob.pe/salasituacional/sala/index/salasit_dash/143

出典

[1] Detailed information on these cases is available in the Oropouche Epidemiological Alert in the Region of the Americas 1 August 2024 of the Pan American Health Organization / World Health Organization. Available from:
https://www.paho.org/en/documents/epidemiological-alert-Oropouche-region-americas-1-august-2024
[2] Pan American Health Organization / World Health Organization. Oropouche Epidemiological Alert in the Region of the Americas, 1 August 2024. Washington, D.C.: PAHO/WHO; 2024. Available from: https://www.paho.org/es/documentos/alerta-epidemiologica-oropouche-region-americas-1-agosto-2024. view
[3] Pan American Health Organization / World Health Organization. Epidemiological Update
Oropouche in the Americas Region - 6 September 2024. Washington, D.C.: PAHO/WHO;
2024. Available from: https://www.paho.org/en/documents/epidemiological-update-oropouche-americas-region-6-september-2024 
[4] Detailed information on previously reported cases is available in the Epidemiologic Alert on Oropouche in the Region of the Americas: vertical transmission event under investigation in Brazil, 17 July 2024. Washington, D.C.: PAHO/WHO; 2024. Available from: https://www.paho.org/en/documents/epidemiological-alert-Oropouche-region-americas-verticaltransmission-event-under
[5] Instituto Nacional de Salud Colombia. Boletín Epidemiológico Semanal. Semana epidemiológica 38, 15 al 21 de septiembre de 2024. Bogotá: INS; 2024. [cited 7 October 2024]. Available from: https://www.ins.gov.co/buscadoreventos/BoletinEpidemiologico/2024_Boletin_epidemiologico_semana_38.pdf  
[6] Benitez A, Alvarez M, Perez L, Gravier R, Serrano S, Hernandez D, et al. Oropouche Fever, Cuba, May 2024. Emerg Infect Dis. 2024;30(10):2155-2159. https://doi.org/10.3201/eid3010.240900
[7] Castilletti C, Huits R, Passarelli Mantovani R, Accordini S, Alladio F, et al. Replication-competent Oropouche virus in semen of a traveler returning to Italy from Cuba, 2024. Emerg Infect Dis. 2024 Nov [Nov. 21. 2024]. https://doi.org/10.3201/eid3012.241470

World Health Organization(5 December 2024)Disease Outbreak News; Oropouche virus disease - Region of the Americas
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2024-DON545

海外へ渡航される皆様へ

オロプーシェ熱は節足動物(ヌカカや蚊)により媒介されるウイルス感染症で、南アメリカ大陸の国々で集団発生が報告されています。オロプーシェ熱に対する特異的な抗ウイルス治療法やワクチンはないため、このウイルス感染症を予防するためには、媒介節足動物の防除・駆除対策および個人防護対策が重要となります。
 
FORTHウェブサイトで訪問先の感染症流行情報を確認し、節足動物媒介性感染症が発生している国へ旅行される際には、以下の点にご注意ください。また、妊娠の可能性のある方や妊婦の方はより注意して予防対策をこころがけましょう。
 
個人的な予防対策として、以下の方法が有効です。
  • 露出した皮膚には虫除け剤を使用してください。
  • 長袖のシャツや長ズボンを着用し、できるだけ肌の露出を避けましょう。
  • 屋内では網戸やエアコンを使用し、ヌカカや蚊の侵入を防ぎましょう。
  • 蚊のいる環境では、就寝時には殺虫剤処理された蚊帳を利用し、昼寝の際も使用することをお勧めします。
  • 虫よけ加工された衣服を必要に応じて使用してください。
 
海外へ渡航される際には、以上の予防対策を徹底し、媒介昆虫に刺されないよう心がけてください。また、現地で体調に異変を感じた場合は、速やかに医療機関での診断を受けることをお勧めします。これらの対策を徹底し、安全と健康に留意して渡航しましょう。

備考

厚生労働省委託事業「国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業」にて翻訳・メッセージ原案を作成。
 
For translations: “This translation was not created by the World Health Organization (WHO). WHO is not responsible for the content or accuracy of this translation. The original English edition “Oropouche virus disease - Region of the Americas. Geneva: World Health Organization; 2024. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO” shall be the binding and authentic edition”.
For adaptations: “This is an adaptation of an original work “Oropouche virus disease - Region of the Americas. Geneva: World Health Organization (WHO); 2024. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO”. This adaptation was not created by WHO. WHO is not responsible for the content or accuracy of this adaptation. The original edition shall be the binding and authentic edition”.