皮膚の異常は、海外旅行でもっとも頻繁にみられる問題の一つです。ウイルスや細菌による全身の感染に伴って異常が起こることもあれば、寄生虫、細菌、真菌(カビ)などが局所に感染して起こることもあります。
皮膚の異常に際しては、医療機関での診察時に原因がわかりやすいように、旅行に関する下記の情報を整理しておきましょう。
- 旅行先と旅行期間
- 旅行先での活動内容(水浴び、海水浴、草原でのハイキングなど)
- 虫に刺されたかどうか
- 皮膚の異常が起こり始めた時期、起こり方(徐々に・突然など)
- 全身の異常(発熱、腹痛など)の有無とそれが起こり始めた時期
症状によって分けると、海外旅行者に多い皮膚の病気には次のようなものがあります。
発熱にともなって発疹がみられるもの(速やかに医療機関におかかりください)
- デング熱
熱帯、亜熱帯に旅行した後に発熱と発疹がみられる場合、もっとも疑わしい病気です。蚊に刺されることによってうつります。熱がでてから3~4日して体の中心部から手足や顔に発疹が広がっていきます。
- リケッチア感染症
野山や畑、草むらでダニやノミに刺されることによってうつります。種類によって異なりますが、典型的なものでは発熱、頭痛、吐き気などの全身の症状と、少し盛り上がった赤い発疹がみられます。
- チクングニア熱
流行地で蚊に刺されることによってうつります。発疹は通常発熱の後に起こります。典型的には少し盛り上がった赤い発疹が、体の中心部や四肢に生じます。
- 腸チフス
食べ物や水からうつります。感染して1~3週間で高熱や頭痛がみられ始め、熱が高くなった際に胸や背中、お腹に淡いピンク色の発疹がみられます。
かゆみが強い発疹
- 疥癬
人からうつる、旅行者がかかる可能性の高い病気です。非常にかゆい、ニキビのような発疹が、手の肘の関節、腋の下、鼡径部、乳房、ウェスト、おしり、指の間などにみられます。全身のかゆみが生じることもあります。夜間にかゆみが悪化します。
- 虫刺され
蚊、ダニ、南京虫(トコジラミ)など。
- シガテラ中毒
熱帯の魚介類がもつ毒による病気で、魚介類を食べて数時間で起きます。かゆみとともに、冷たいものに触ると感電したような痛みを感じます。消化器の症状や筋肉痛、全身のだるさをともないます。
- 皮膚幼虫移行症
寄生虫の幼虫で汚染された土の上を歩くことなどにより、幼虫が皮膚に侵入し生じる病気です。足やおしりに生じることが多く、激しいかゆみや発赤が生じます。蛇行した筋状の発赤がみられ、少しずつ移動します。
痛みをともった発疹
- 化膿性の発疹
皮膚の表面から黄色ブドウ球菌などの細菌が侵入し、増えることで起こります。虫刺されがきっかけとなることがよくあります。いわゆる「おでき」から、皮膚の深いところから脂肪組織まで炎症がおよび、広い範囲で腫れと熱がみられる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」まで、さまざまな状態があります。抗生物質による治療を行いますが、入院が必要な場合もあります。
むずむず感のある発疹
- ハエウジ症
皮膚に植え付けられたハエの卵や、衣類やシーツについた卵から幼虫(ウジ)がかえり、皮膚に寄生します。
- 皮膚幼虫移行症
この他にも海外旅行に関連して、多くの病気で皮膚の異常が生じます。海外旅行後、特に熱帯・亜熱帯を旅行後に皮膚の異常が続く場合には、必ず医療機関におかかりください。