海外勤務健康管理センター
検査結果は誰のもの?
Japan Overseas Health Adiministration Center
在日外国人に、日本の医療に対する感想をたずねると、
- 病院で行われる検査は非常に早く、かつ低料金。これは良い点。
- 検査結果をもらえない。医師が説明してくれないことさえある。これは悪い点。
- 病院以外で検査を受けたい場合、どこで受けられるのかわからない
といった意見が出ます。これらは検査に対する認識の違いを反映しているものと思われます。
検査の手続き
日本では、検査は医師が依頼して、結果は医師に返されます。 しかし、これは特殊な形態です。海外では、
- 患者が、自分の健康状態を把握するため、検査を受ける。
- 患者が、自分で検査を依頼して、自分で料金を支払う。
- 検査結果は患者のもの。自分で保管する必要がある。
という認識をもって下さい。
臨床検査室 clinical laboratory
海外では、患者が直接利用できる臨床検査室 clinical laboratory があります。そこでは、
- 患者が医師に相談することなく、直接検査室を訪れる。
- 検査室では患者の希望を聞き、採血などを行う。
- 後日、結果を受け取りに来るよう説明がある。
- 検査結果は直接患者に渡される。
医師が検査を勧めた場合でも、同様の流れで検査を受けます。 検査結果は、ファイルに保管しておきましょう。
レントゲン科、内視鏡センターなど
海外受診すると、医師の紹介で別の検査施設を利用することになる場合があります。例えば、
- 呼吸器科を受診したら、レントゲン撮影のため、レントゲン科を紹介される。
- 消化器科を受診したら、内視鏡検査のため、内視鏡センターを紹介される。
といったことがおこります。 医師の紹介が必要な点を除いて、手続きは同様です。 受け取った報告書やレントゲン写真はなくさないようにして下さい。
健康診断 Executive Checkup, Health Checkup
わが国では健康診断が普及しています。制度上も
- 労働安全衛生規則などで健康診断の項目が指定されている。
- 健康診断を行う医療機関は検査セットのメニューを設けている(レディメイドの健康診断)。
- 会社あるいは保険組合から補助が出る。
といった形で健康診断が推奨あるいは義務づけられています。
しかし海外において、健康管理は個人の問題です。 定期的に検査を受けるのは社会的ステータスを象徴する健康管理法です。 原則として、費用は自己負担で、検査項目も自分で選ぶのが通常です。
- 健康管理専門の外来 Exective clinic を設けている医療機関もあります。こういった外来がある場合、そこで健康診断を受けることが可能です。
- 血液検査や尿検査くらいなら、検査室 Clinical laboratory を訪れ、そこで受けることもできます。しかし、レントゲン撮影を受けるには、レントゲン科を訪れる必要があります。ここで医師の紹介が必要となるかもしれません。
- 内視鏡検査を受けたい場合、消化器外来に行けばよいというわけでもありません。内視鏡センターが全く別機関になっていることもあります。
健康管理専門の外来がない場合、あちこちの検査センターを回ることになります。どこに行けばよいかわからない場合、家庭医あるいは一般外来の医師に相談して下さい。
健康管理ファイル作成のすすめ
海外では、「自分の健康は自分で管理するもの」です。そして「検査結果は患者のもの」です。
海外赴任にあたって、健康管理ファイルを作りましょう。 日本から適当なサイズのバインダーを持ってゆくと便利でしょう。 その気になれば、ファイルの中身がどんどん増えて、立派な健康管理記録になります。
- 健康診断
- とりあえず赴任前の健康診断の結果報告書があるはずです。 まずは、それをファイルに保管しましょう。
- 予防接種
- 赴任前に受けた予防接種の証明書を入れておきましょう。 母子手帳の翻訳があれば、それも入れましょう。
- 海外で受けた検査
- 海外で受診したら、検査報告書を渡されます。 これもファイルに入れましょう。
- 薬剤
- 医師の処方を受けた場合、処方箋のコピーも入れておきましょう。 薬局で薬を購入して使用したら、その能書も保管しておきましょう。
- その他の情報
- 医療機関を受診したら、その住所や医師の名前がわかる文書を残しましょう。
医師に相談する時に、このファイルをもってゆくと、これだけで説明の手間が相当省けるはずです。

セカンド・オピニオン
患者が治療前や治療中に別の医師に意見を求めることを、セカンド・オピニオン second opinion と言います。
わが国では、以下のような背景もあって、この習慣は一般的ではありません。
- 政府が「自分の健康は自分で管理する」という教育を行なっていない。
- 医療法の広告規制で、医療に関する情報が不足している。
- 院内で、診察、検査、投薬が全て行われ、医療の内容が不透明。
- 検査結果を患者に渡さない。
しかし、海外ではセカンド・オピニオンが広く行われます。 担当医の意見に疑問を感じる場合、健康管理ファイルをもって、別の医師に相談してみて下さい。
Q&Aの回答
Q.レントゲン検査を受けたら、レントゲン写真を渡されました。どうすればよいのでしょうか?
クリニックとレントゲン検査の運営が独立しているためです。
- 検査結果はファイルに保管しておきましょう。
- 次回、医師の診察を受ける際には、忘れずに持って行きましょう。
- 検査結果を別の医師に見せて、相談する( Second opinion )ことも可能です。
Q.海外で健康診断を受けたいのですが、どうすればよいのでしょうか?
健康診断は Exective checkup といいます。 エグゼクティブ・クリニック Exective clinic といった名称の外来で行っています。 こういった外来がない場合、一般外来で相談して下さい。 詳細は、健康診断の項目をご覧下さい。
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