2013年11月26日更新 中米におけるコレラの流行状況について (更新10)

コレラは、コレラ菌によって、下痢や嘔吐が生じる病気です。症状が軽いことも多いですが、重い下痢が起こることがあり、大量の水分が失われ、脱水から死亡することもあります。

11月21日付けで公表された汎米保健機関(PAHO)の情報と11月25日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、メキシコ、キューバ、ドミニカ共和国、ハイチにおけるコレラの発生状況は下記の通りです。

メキシコの状況

メキシコ保健省は、コレラ菌(Viblio cholerae)O1、血清型Ogawaに感染した患者が新たに4人発生したと報告しました。患者のうち3人はベラクルス(Veracruz)州から報告され、他の1人はイダルゴ(Hidalgo)州から報告されました。

メキシコでは、今年9月に集団感染が発生してから、これまでに、コレラ菌に感染したと確定された患者は184人と報告されており、このうち1人が死亡しました。確定患者のうち、160人はイダルゴ州、11人はベラクルス州、9人はメヒコ(Mexico)州、2人は連邦区、2人はサン・ルイス・ポトシ(San Luis Potosi)州で発生しました。

メキシコの保健当局は、サーベイランスの強化、医療へのアクセスと医療の質の確保を継続しています。市民への啓発活動は、特に水と食品の安全に重点が置かれ、スペイン語のほか、先住民族の言語でも行われています。様々なレベルの医療システムで保健の専門家がコレラの予防と治療に関するトレーニングを受けています。

疫学診断・レファレンス研究施設(Institute of Epidemiological Diagnostics and Reference)で行われたコレラ菌の感受性検査では、ドキシサイクリンとクロラムフェニコールに対しては感受性がありましたが、シプロフロキサシンに対する感受性が低下しており、トリメトプリム・スルファメトキサゾールに対しては耐性を示しました。

メキシコにおけるコレラの地域内感染は、2001年以来、初めてのことです。メキシコの患者から分離された系統の遺伝子学的な特徴は、カリブ海諸国(ハイチ、ドミニカ共和国、キューバ)で流行している系統と高い相同性(95%)がみられ、1991年から2001年の間にメキシコで流行した系統とは異なっています。

WHOは、メキシコのこの事例に関して渡航や貿易を制限することを推奨していません。

キューバの状況

キューバの保健当局は、複数の地域で発見された疑い患者の調査を継続しています。今年8月24日以降、国際保健規則の担当は新たな患者発生を報告していません。2012年第27週から今年第34週までに、合計678人の患者が発生し、このうち3人が死亡しました。

ドミニカ共和国の状況

ドミニカ共和国では、コレラの流行の始まり(2010年11月)から、今年第45週までに、31,206人の疑い患者が報告され、このうち462人が死亡しました。今年第41週から第45週に116人の疑い患者が報告され、このうち4人が死亡しました。過去2週間では、32州のうち12州で疑い患者が報告されました。過去2週間における疑い患者の92%は、アスア(Azua)、首都地区(Distrito Nacional)、プエルト・プラタ(Puerto Plata)、サン・クリストバル(San Cristobal)、サンティアゴ(Santiago)、サント・ ドミンゴ(Santo Domingo)、ラ・ベガ(La Vega)で発生しました。

今年第41週以降、疑い患者数は減少しましたが、過去2週間で増加しました、時点では、疑い患者の報告数は減少傾向にあります。今年の致死率は2.2%で、2011年の致死率(1.7%)と2012年の致死率(0.8%)に比べ、高くなっています。保健当局は調査を行い、対応策を実施しています。

ハイチの状況

ハイチでは、コレラの流行が始まり(2010年10月)から、今年11月13日までに報告されたコレラの患者は合計689,448人に達しており、そのうち384,956人(55.8%)が入院し、8,448人が死亡しました。全国の累積致死率は1.2%ですが、地域によって異なり、南東(Sud Est)県では4.4%であり、ポルトープランス(Port-au-Prince)では0.6%です。過去2週間で患者数は増加傾向を示しました。10月26日付の更新情報以降、新たに5,363人の患者が発生し、このうち87人が死亡しました。新たな患者はハイチの全県から報告されました。

中米へ渡航、滞在される方は、今後の情報に注意していただくとともに、以下の対策を行ってください。

  • 飲料水や歯みがき、うがいの水にはミネラルウォーターを使うか、十分に沸騰させた水を使うこと。氷は生水から作られている可能性があるので食べないこと。
  • 食事は加熱されたものを、冷めないうちに食べること。
  • 食事の前、トイレの後には石けんと水で十分に手洗いすること。
  • 下痢になった場合、以下の作り方で作った水を十分にとり、できるだけ早く医療機関で診療を受けること。

図.吸収のよい水の作り方

感染症情報

出典

参考

FORTH 新着情報

中米でのコレラの流行状況について (更新9) (2013年11月14日)
https://www.forth.go.jp/topics/2013/11141003.html