JOHAC 海外勤務健康センター 研究情報部



JOHAC(海外勤務健康管理センター)は独立行政法人労働者健康福祉機構の中で、海外勤務者の健康管理に貢献してきた組織です。 JOHACは平成22年3月に閉鎖されましたが、 FORTHでは旧JOHACホームページ情報の一部を転載しています。 JOHAC関連情報のご利用にあたっては、閉鎖以降の情報更新はなく、今後も更新される予定はないことをご了承ください。このため、情報内容が現状と異なっている可能性がございますので、ご利用にあたっては他の方法でのご確認もお願いいたします。
  • 国別情報
    • 巡回都市の情報(アンケート結果)
    • 海外医療事情アンケート一覧
  • 海外の医療
    • 海外の医療(受診の心がまえ)
  • 薬について
    • 海外の大衆薬

海外勤務健康管理センター

海外の医療費は高い

Japan Overseas Health Adiministration Center

海外在住の日本人に医療費に関してうかがうと、

  • 医療費が高額で驚いた。
  • 診察、検査、投薬と、その度に支払いを要求されて面倒。→ 病院の受診を参照
  • それぞれの領収書などを集めて、保険請求をする手続きが面倒。 → 医療保険を参照

といった意見が寄せられます。 ここでは、「海外の医療費が高い」と言われる理由を解説します。


治療費のばらつき

日本の場合

日本では「どこの病院を受診しても医療費はほぼ同じ」です。この裏には2種の統制があります。

医療サービスの単価

個々の医療サービスに対して、価格統制が行われています。

各サービスの料金を規定した表は、「保険点数表」と呼ばれています。

医療サービスの選択
「該当する病名」がついた患者に対して、「保険点数表に記載」されているサービスを「指定の限度内で」行なうことのみ許されます。

具体的には以下のような料金計算を行ないます。 例えば、発熱患者に、尿検査、血液検査、マラリア検査を行ったとします。 保険点数表(1995年度)で、それぞれの点数を調べると下記の点数が得られます (表に記載されていない治療はできません)。 基本的には、これらの合計点数を10倍すれば検査料になります。

尿検査項目一般検査沈渣判断料
点数253022
血液検査項目血算血液像マラリア検査判断料
点数303550105

海外の場合

海外では、医療に対する規制が少ないのが通常です。 病院がオープン・システムということもあって、患者にとって医療の選択肢は実に多様です。 当然、医療費に大きなばらつきが発生します。

  • 治療内容は患者の希望や経済状態に左右されます。
    • お金も時間もない患者は、医師の診察を受けないで、直接検査センターに行ったり、薬局で治療薬を購入します (原則として、こういった対応はお勧めできません)。
    • 時間が許せば、総合病院の一般外来を受診します。多くの患者で混み合っており、あまり良い環境ではありませんが、比較的低料金で医師の診察を受けることができます。
    • お金が許せば、開業医を受診するのが最良です。医師が治療の選択肢を提示し、その費用に関しても説明してくれます。この場合も、患者が医療費を考慮の上、治療法を選択することになります。
  • 個々のサービスの料金は、各医療機関が自由に設定できます。
    • クリニックは十分な診察時間をとる分だけ、診察料が割高。
    • 専門医療を行なう医療機関は、特殊な資源(専門医、専門技術、特殊検査、稀用薬など)が必要、患者が少ない(需給が不安定)、競合が少ないといった理由から、料金が割高。
    • 比較的裕福な階層を対象に行き届いたサービスを行なう医療機関(途上国の外国人向け外来など)は料金が割高。

結果として、同じ地域でも医療費に10倍以上の開きが出ます。


平均的な医療費の差

海外の医療費を下表に示します。物価水準で補正すると、日本より高めと思われる国が多いようです。

簡単な内科診療 X線などの検査 虫垂炎手術
アメリカ \16,712 \12,367 \1,351,500
カナダ \5,571 \7,576
イギリス \12,678 \10,603 \532,000
フランス \7,086 \6,614 \745,500
ドイツ \4,803 \8,806 \637,000
オーストラリア \3,696 \6,279 \513,450
韓国 \3,466 \2,600 \119,975
香港 \3,968 \2,587 \352,800
シンガポール \4,803 \12,008 \235,830
タイ \3,912 \2,087 \142,660
日本 \11,502 \5,001 \216,980

COL日本海外派遣社員のための世界生計費調査(1992年データ)およびAIU調査結果(1991年)を参考にしました。


医療保険の支給形式

損害保険形式(患者が保険請求)

医療保険の基本形態で、海外ではこれが原則です(日本の健康保険を海外で利用する場合も含む)。

  1. 保険会社と契約し、定期的に保険料を納める。
  2. 医療機関を受診した場合、患者が料金を全額支払い、診断書・領収書等の書類を集める。
  3. 患者が保険会社/組合から医療費の払い戻しを受ける。

海外では、保険会社から医療費の払い戻しを受けるため、保険請求の手続きが必要となります(会社がこの手続きを代行してくれる場合もあるようです)。

現物支給形式(医療機関が保険請求)

わが国で健康保険を使って受診する場合の、医療費の流れを下図に示します。

  1. 保険契約は義務化されている(国民皆保険制度)。
  2. 保険料納入は会社が代行している(給与から天引き)
  3. 医療費の払い戻し請求は病院・医院が代行(社会保険では治療費の30%のみ徴収される)。

国内の病院や医院の窓口で支払っているのは「患者負担分」です。 これは治療費ではなく、「予防を怠って病気になったことに対するペナルティ」のようなものです。 本当の治療費はこの約5倍です。

海外旅行者傷害保険のキャッシュレスサービスも類似のシステムです。


海外の医療Q&Aに戻る。

Coryright Japan Overseas Health Administration Center.All right reserved.