2012年03月13日更新 ケニア・マサイマラ地区への旅行者でアフリカトリパノソーマ症が発生しました。

トリパノソーマ症はトリパノソーマ原虫に汚染された昆虫に刺されることによって感染します。アフリカ大陸とアメリカ大陸ではこの病気をうつす昆虫の種類が異なり、アフリカ大陸では、ツェツェバエに刺されることによりうつります。人から人へとうつることはありません。

  • 西、中央アフリカで見られるガンビアトリパノソーマは、慢性感染症を引き起こし、感染しても数ヶ月又は数年にわたって大きな症状のないことがあります(報告症例の95%)。
  • 東、南アフリカで見られるローデシアトリパノソーマは、急性感染症を引き起こし、最初の症状は感染後数週間または数ヶ月で出現し、急速に進行します(報告症例の5%以下)。
  • 主にラテンアメリカで見られる他の型のトリパノソーマ症は、アメリカトリパノソーマ症や、シャーガス病と呼ばれています。

ヒトアフリカトリパノソーマ症はアフリカ睡眠病とも呼ばれ、症状は1週間~数カ月の潜伏期間の後、発熱、頭痛、筋肉痛などがおこります。その後、眠気、激しい頭痛を主とする様々な神経症状が現れます。治療を行わない場合は、死亡する可能性が高い病気です。

CDCやユーロサーベイランスの報告によりますと、2012年1月から2月にケニアのマサイマラ国立保護区を旅行したドイツ人とベルギー人がヒトアフリカトリパノソーマ症と診断されています。この2人の接点はなく、旅行時期も異なっていました。

1人目の患者はドイツ人の62歳の男性で、2012年1月18日から19日までマサイマラ国立保護区へキャンプとサファリ旅行をし、昆虫忌避剤を使用して半袖半ズボンでほとんどの時間を過ごしました。1月28日に発熱し、2月1日にトリパノソーマ症と診断されました。

2人目の患者はベルギー人の男性で、2012年2月7日から9日までマサイマラ国立保護区を旅行し、マラ川にあるロッジに1晩滞在し、保護区での野生動物追跡旅行に2回参加しました。2月13日にベルギーへ帰国しました。3日間続く高熱、全身倦怠感、頭痛で2月19日に病院を受診しました。旅行から9日後にトリパノソーマ症と診断されました。

いずれの患者もローデシアによるヒトアフリカトリパノソーマ症でした。

同地区では12年以上も患者が出ておらず、ヒトアフリカトリパノソーマ症の地区内集団発生が示唆されています。

予防できるワクチンはありませんので、この地区を旅行予定の方は短期間の滞在であってもツェツェバエに刺されないよう、虫刺され対策を行ってください。ツェツェバエは、明るい色や暗い色、青色やメタリック生地にひきつけられます。また、薄い生地の洋服の上から刺すことができます。厚みがあって、周囲の環境と区別のつきにくい色彩の衣服を着るようにしましょう。

  • 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
  • 車に乗る前にツェツェバエがいないか注意してください。
  • ツェツェバエは日中の暑い時間帯は茂みで休んでいますので、茂みに入らないようにしてください。
  • 昆虫忌避剤を使用してください。ツェツェバエに咬まれることを防ぐには十分ではありませんが、他の病気を媒介する昆虫や蚊による刺咬を防ぐのに効果的です。
  • 虫除け対策をしよう

感染症情報:
トリパノソーマ症(シャーガス病、アフリカ眠り病)

参考

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