感染症の予防と健康相談

渡航前の注意

〇渡航先の感染症の発生状況に関する情報を事前に入手し、予防接種が受けられる感染症は、余裕をもって医師にワクチン接種の相談をしておくなど、適切な感染予防を心がけましょう。

〇海外に渡航する機会に、これまで受けた予防接種について確認しましょう。国内で予防接種が推奨される疾患で接種が不十分なものがあれば、渡航前に検討しましょう。
>>予防接種で予防できる病気(海外渡航のためのワクチン(厚生労働省検疫所))

渡航中の注意

食べ物、水を介した感染症

A型肝炎、コレラなどは、発展途上地域では広く発生する感染症です。手洗いをこまめにし、生水・氷・生の魚介類・カットフルーツ・サラダなどの生野菜の飲食は避けるようにしましょう。食事は十分に火の通ったものを食べましょう。
>>食べ物からうつる病気(厚生労働省検疫所)

蚊やダニを介した感染症

マラリア、デング熱は熱帯・亜熱帯地域で広く発生する感染症です。マラリアは全世界で年間約2億7000万人の患者、推計62万7000人の死者があると報告されています。
デング熱は全世界で毎年3億9000万人感染者がいると推計されており、最近の数十年間で劇的に増加しています。
また、ウエスト(西)ナイル熱は、北米を中心に患者が報告されています。感染時期のピークは夏から秋です。原因となるウイルスは、アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、北米など広い地域に分布しています。
長袖・長ズボン着用や虫除けスプレーなど、蚊に刺されないための対策が必要です。
>>虫からうつる病気(厚生労働省検疫所)

動物を介した感染症

狂犬病は、我が国では昭和33年以降、人でも動物でも国内で感染した事例はありませんが、依然として世界中の国々で発生しています。
狂犬病は、ほとんど全ての哺乳動物から感染する可能性があります。人への感染源のほとんどが犬ですが、ネコやアライグマ、キツネ、スカンク、コウモリなど、犬以外の野生動物からも感染します。狂犬病のウイルスは感染動物の唾液に含まれます。哺乳動物に咬まれたり、傷口、目や口の粘膜をなめられたりすることで感染します。発症した場合有効な治療方法はありません。野犬をはじめとする野生動物との接触を避けることが大切です。もし、犬などの動物に咬まれたら、すぐに傷口を石けんと水でよく洗い、できるだけ早く現地の医療機関を受診し、傷口の消毒を行い、狂犬病ワクチン接種の必要性について相談しましょう。
>>鳥インフルエンザについて 
>>動物からうつる病気(厚生労働省検疫所)

人を介した感染症

咳やくしゃみでうつる病気がはやっているときには人ごみに近寄らないようにしましょう。
また、HIV感染症・AIDS(後天性免疫不全症候群)など性感染症に感染することもあるので、ゆきずりの性交渉はもたないようにしましょう。
>>人からうつる病気(厚生労働省検疫所)
>>性行為でうつる病気(厚生労働省検疫所)

土壌や水を介した感染症

傷口からうつる病気
破傷風菌はもともと土中にいる傷口から体に侵入して感染します。また、破傷風菌は動物に咬まれたりした際にうつることがあります。皮膚の表面にいる黄色ブドウ球菌などは、虫刺されなどの傷から中に入り局所や全身の症状を起こすことがあります。怪我をしたら適切な治療を受けましょう。

健康な皮膚へもうつる病気
一部の寄生虫は、幼虫のいる河原や湖畔を裸足で歩いたり、水のなかに入ると、虫が皮膚を食い破り体のなかに入り込み感染します。野生動物の尿に汚染された土壌や水からうつる感染症もあります。安全が確認できない場所では裸足で歩かないようにしましょう。

その他
病原体のいる土ぼこりを吸いこむことでうつる感染症や、病原体に汚染された霧状の水を吸いこむことでうつる病気もあります。
土ぼこりなどからうつる病気のみられる場所に近づかないようにしましょう。
>>周囲からうつる病気(厚生労働省検疫所)

海外で病気にかかったら・・・

言葉や習慣の異なる海外で、万が一の場合を考え準備しておくことには次のようなものがあります。

旅行保険

万が一の際、旅行保険に加入していないと多額な医療費用に対応できない可能性があります。
一般的にクレジットカードには自動的に旅行保険が付帯されていることもありますが額や補償内容が不十分なことも多いです。詳しくは「いざという時の旅行保険」をご参照ください。

海外の医療施設に関する情報収集

以下のサイトに海外の医療施設に関する参考情報が掲載されています。渡航目的地別にあらかじめ情報を入手しておきましょう。「在外公館医務官情報」(外務省)
また、各国の日本大使館・総領事館領事部では、日本人がよく利用する病院や日本語の通じる医者など現地の医療機関を紹介なども行っていますので、お困りの時はご相談ください。
>>在外公館リスト(外務省)

旅先での薬の購入

世界の多くの地域でニセ薬が問題となっています。またニセではないものの効果の薄い医薬品も出回っています。
まず、第一に必要な薬は日本国内でそろえておきましょう。チェックインした荷物が紛失することもありえます。
必ず機内に持ち込む手荷物の中にも十分な薬を入れるようにしておきましょう。機内に持ち込む際、降機後の税関などで問題となる場合がありますので英文等で個人で服薬する目的の治療薬であることを明記した文章を携帯することが望まれます。
>>慢性の病気のある方に

帰国後の注意

• 感染症には潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が、数日から1週間以上と長いものもあり、帰国後しばらくしてから具合が悪くなることがあります。その際は、早急に医療機関を受診し、渡航先、滞在期間、現地での飲食状況、渡航目的や活動内容、動物との接触の有無、ワクチン接種歴などについて必ず伝えてください。

• 空港や港に設置されている検疫所では渡航者の方を対象に健康相談を行っています。
帰国時に発熱や下痢、具合が悪いなど体調に不安がある場合には、検疫官までご相談ください。

• 海外旅行、特に発展途上国を旅行した後、少なくとも6か月の間は、旅行関連の感染症が生じる可能性があることを覚えておきましょう。医療機関にかかる際には、必ず海外旅行したことを告げてください。デング熱やリケッチア感染症による症状は、ほぼ帰国後3週間以内にみられますが、マラリアなどの寄生虫による感染症や、一部の細菌による感染症の症状は、数週間から数か月あるいは数年たってから生じることもあります。

発熱

特に、マラリアやデング熱の流行地域から帰国し発熱がみられる場合には、必ず医療機関を受診しましょう。マラリア、中でも熱帯熱マラリアは急速に悪化することがあります。
>>旅行後の発熱(厚生労働省検疫所)

下痢

帰国してからも下痢の症状がおさまらない場合には、ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)やアメーバ赤痢といった寄生虫による感染症も考えられます。放置すると内臓に問題を起こす場合もありますので、しっかり診断を受け、それに応じた治療が必要です。
>>止まらない下痢(厚生労働省検疫所)

皮膚の異常

皮膚の異常も旅行後によくみられる症状です。発熱も同時にみられる場合、全身の感染症をともなっていることが多く、速やかに医療機関を受診する必要があります。
>>痒い!痛い!皮膚の異常(厚生労働省検疫所)

海外旅行後の体調不良には、思わぬ感染症が潜んでいる可能性があります。早めに医療機関を受診しましょう。医療機関の受診にあたっては、症状に加えて次の情報を整理しておき、医師に伝えましょう。
>>病院にかかる前のチェックシート