どうやってうつる?

食べものからうつる病気

汚染された食べものや水の摂取、あるいは感染者と接触することで感染します。旅行者の下痢の多くは食べものからうつる病気といわれています。下痢を起こすものが主ですが、A型肝炎や腸チフスのように下痢が主な症状でない病気もあります。

ヒトが排泄する病原体

ヒトのおなかの中で病原体が増え、便中に排泄されます。不衛生な環境で食べものや水が汚染され感染を起こします。大流行する病気もあります。

動物の排泄物にでてくる病原体

ヒトと動物の両方に感染する病気のひとつです。牧草地帯では、動物の排泄物による食べものや水の汚染がおこりやすく、この種の病気が多く発生します。

肉や内臓に含まれている病原体

生肉や調理が不十分な肉を食べることで感染します。調理が不十分な卵や乳製品にも注意が必要です。

魚介類に含まれている病原体

生の魚介類を食べることで感染します。

野菜などの植物についている病原体

生野菜などから感染します。野菜に付いた寄生虫卵や幼虫を食べて寄生虫に感染することもあります。

自然界でみられる毒

感染症ではありませんが、植物の持つ自然毒、フグ、シガテラ、毒カマス、一部の貝などの魚介類が持つ自然毒による中毒にも注意が必要です。

生活上の注意事項

・トイレの後、帰宅後、調理前、食べる前などの手洗いをしっかり行いましょう。
・生水は絶対に飲まず、ミネラルウォーターか沸騰させた水を飲みましょう。水割りの氷も安全な水からつくるようにしましょう。
・口に入れるものは全て加熱調理されたものとし、温かいうちにすぐ食べましょう。
・サラダや生の野菜は避けましょう。野菜やフルーツを生で食べる場合には、自分で皮をむいたものだけにしましょう。
 食べ物・水にご注意を!
・衛生状態の悪い地域に滞在する場合、A型肝炎予防接種を受けることを考えましょう。
・下痢をした時の応急処置を覚えておきましょう。
 旅先で下痢になったら

感染症名

A型肝炎
E型肝炎
アメーバ赤痢
カンピロバクター感染症
コレラ
サルモネラ感染症
ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)
ノロウイルス感染症
ポリオ(急性灰白髄炎)
細菌性赤痢
腸チフス、パラチフス
腸炎ビブリオ
病原性大腸菌O157
腸管出血性大腸菌感染症
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病
狂牛病
牛海綿状脳症
住血線虫症
ブルセラ症
クリプトスポリジウム症
サイクロスポーラ症
蠕虫症(ぜんちゅうしょう)
蟯虫症
条虫症
トキソプラズマ症
エルシニア感染症
エキノコッカス症
ロタウイルス
嚢虫症(のうちゅうしょう)
Q熱

虫からうつる病気

昆虫などの虫(節足動物)に刺されたり、咬まれたりして血を吸われ、虫の持っている病原体がうつります。

・海外では日本にはいない蚊がいます。デング熱をうつすシマカなど主に昼間に活動する蚊、マラリアをうつすハマダラカなど主に夜間に活動する蚊がいます。蚊は多くの病気をうつし、中でもマラリアが危険です。
・ハエの仲間にはサシチョウバエやツェツェバエといった血を吸うハエがいます。それぞれ、リーシュマニア症、トリパノソーマ症をうつします。
・ノミ類は産卵に先立って血を吸います。動物とヒトの両方を刺すものもあります。ペストなどをうつします。
・サシガメは、アジア、アフリカ、中南米などに分布している体長2~3cmの昆虫です。主として屋内におり、夜間寝ている人を襲います。トリパノソーマ症をうつします。
・ダニはマダニ(Tick)と小型のダニ(Mite)に分けられます。マダニは咬みつく際に頭部を皮膚に深く入れるため、簡単には取り除けません。マダニは牧場や森林に発生することが多いため、このような場所に長く滞在しないことが大切です。リケッチア疾患など多くの病気をうつします。
・シラミには、頭につくアタマジラミと服につくコロモジラミの2種類のヒトシラミに加え、陰毛に寄生し主に性行為で感染するケジラミがあります。コロモジラミが病原体を運ぶ点で重要です。発疹チフスなどをうつします。身体を清潔にし、頻繁に着がえることが大切です。脱いだ衣服は、高温でアイロンがけする、熱湯あるいは消毒液に浸すなどの方法で消毒します。

生活上の注意事項

虫除け対策をしっかりと行いましょう。
・虫からうつる病気がはやる地域では、発熱したら早めに医療機関を受診し、きちんと治療を受けましょう。
・日本脳炎と黄熱には予防接種が有効です。
・マラリア流行地域では、マラリア予防薬を携行するかどうか、出発前に渡航外来で相談しましょう。

感染症名

ウエストナイル熱
オンコセルカ症
ダニ媒介性脳炎
チクングニア熱
デング熱
トリパノソーマ症(シャーガス病、アフリカ眠り病)
フィラリア症、リンパ性
ペスト
クリミア・コンゴ出血熱
マラリア
ライム病
リーシュマニア症
リケッチア感染症
リフトバレー熱
黄熱
回帰熱
日本脳炎

動物からうつる病気

動物が持っている病気がヒトにうつる場合があります。危険な病気も多く、狂犬病は発病すると助かりません。

動物あるいはその排泄物にさわることによってうつります。

動物をさわって病原体が直接うつったり、排泄物中の病原体に汚染された食品を食べることでうつったり、排泄物中の病原体がほこりとなり、それを吸ったりしてうつります。また、排泄物中の寄生虫が直接皮膚から侵入することでうつることもあります。

動物に咬まれたり、引っ掻かれることによってうつります。

狂犬病や猫ひっかき病などがあります。狂犬病は、傷口や粘膜をなめられることによってもうつる可能性があります。

生活上の注意事項

・動物にむやみに近づかない、さわらない。
・万が一、動物に咬まれたら、ただちに医療機関で適切な治療を受けましょう。
・動物の排泄物の多い牧草地帯では、飲食物への注意を厳重に守りましょう。
・感染症の流行状況によっては、毛皮や乳製品にも注意が必要です。

感染症名

狂犬病
エボラ出血熱
マールブルグ病
南米出血熱
ラッサ熱
炭疽(たんそ)
バルトネラ菌関連疾患
鳥インフルエンザ(H5N1)
ハンタウイルス感染症(腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群)

人からうつる病気

人が咳をした際に吐き出される、病原体が含まれるしぶき(飛沫)を吸ったり、人の鼻水や唾液にさわり、その病原体が口から入ることでうつります。
麻しん(はしか)など、非常に感染しやすい病気も多く、大規模な流行を起こす場合があります。 一方、予防接種の効果が高い病気もあります。定期予防接種の対象になっている病気については必ず定期予防接種を終えておきましょう。また、インフルエンザや肺炎球菌などにかかると危険が高い人は、かかりつけ医に相談の上、予防接種を積極的に受けることが大切です。

生活上の注意事項

・あらかじめ予防接種を受けておきましょう。
・咳をしている人や病気の人にはあまり近づかないようにしましょう。

感染症名

インフルエンザ(流行性感冒)
ジフテリア
手足口病
重症急性呼吸器症候群(SARS)
水痘
髄膜炎菌
麻しん
肺炎球菌性疾患(肺炎球菌性肺炎)
風しん
結核

性行為でうつる病気

HIV感染症が世界中で爆発的に増加しています。薬が効きにくくなっている性行為感染症もあり、うつらないようにする注意が必要です。

・主に泌尿生殖器に症状があらわれる病気です。病気や男女で症状が異なる場合があります。
・HIVやB型肝炎などは全身の病気で、感染者の血液や体液にウイルスがいます。性行為により粘膜に接触したり、あるいは医療行為により傷口から病原体が侵入すると感染します。
・男性同性愛者の間でよくみられる、アメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫症などの消化器系の病気も性行為でうつります。
・ケジラミや疥癬などは感染者と接触することで感染します。

生活上の注意事項

・ゆきずりの性行為は危険です。また、コマーシャル・セックス・ワーカー(売春で収入を得ている人)は特に感染率が高く、危険です。
・コンドームを正しく使用することで、ある程度予防が可能な病気があります(HIV感染症など)。
・医療行為によりうつることもあり、医療機関が清潔な器具を用いているか確認すことも大事です。

感染症名

HIV感染症 / AIDS
ヒトパピローマウイルス感染症
性行為感染症
ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)
アメーバ赤痢
B型肝炎
疥癬

周囲からうつる病気

傷口から入る病気と、健康な皮膚でも入ってくる病気があります。

傷口からうつる病気

もともと土中にいる破傷風菌は傷口から体に侵入して感染します。また、破傷風菌は動物に咬まれたりした際にうつることがあります。皮膚の表面にいる黄色ブドウ球菌などは、虫刺されなどの傷から中に入り局所や全身の症状を起こすことがあります。

健康な皮膚へもうつる病気

一部の寄生虫は、幼虫のいる河原や湖畔を裸足で歩いたり、水のなかに入ると、虫が皮膚を食い破り体のなかに入り込み感染します。 野生動物の尿に汚染された土壌や水からうつる感染症もあります。

その他

病原体のいる土ぼこりを吸いこむことでうつる感染症や、病原体に汚染された霧状の水を吸いこむことでうつる病気もあります。

生活上の注意事項

・怪我をしたら適切な治療を受けましょう。
・安全が確認できない場所では裸足で歩かないようにしましょう。
・危険地域では、川や湖沼など淡水で水浴びしないようにしましょう。
・土ぼこりなどからうつる病気のみられる場所に近づかないようにしましょう。

感染症名

Q熱
コクシジオイデス症
ヒストプラスマ症
レジオネラ症
住血吸虫症
破傷風
類鼻疽(るいびそ)
疥癬
レプトスピラ症(ワイル病)
皮膚幼虫移行症(CLM)
糞線虫症

医療行為でうつる病気

医療現場は感染症がうつる危険性が高い場所です。

・B型肝炎やC型肝炎、HIV感染症は輸血や針刺し事故によっても感染します。
・マラリア、デング熱など、通常は蚊に刺されることでうつる病気も、輸血や針刺し事故でうつることがあります。
・医療水準の低い地域では、医療行為によって破傷風にかかる場合があります。
・病気が流行しているとき、病院は多くの患者で混雑します。医療行為そのものでうつる訳ではありませんが、患者から直接病気がうつることはまれではありません。
・入院患者の中で疥癬が集団発生する場合があります。

生活上の注意事項

・衛生管理の行き届いた医療機関を選びましょう。
・注射器など皮膚を傷つける医療器具を使用する場合、可能な限り医療機関に対して直接、安全な器具であるかどうか(滅菌されているかどうか)確認を求めてください。
・ひげそり、注射針の使いまわしは危険です(血液を通じた感染が起こる可能性があります。)。
・感染症流行時には、患者で込み合った病院を避けましょう。

感染症名

B型肝炎
C型肝炎